我が家では冬の間、気温が華氏72度(摂氏22.2度)を下回ると暖房が稼働するように設定している。「NEST(ネスト)」というグーグルのスマート空調デバイスだが、ここ数日は全く動きがない。気温が華氏84度(摂氏29度)程度に達する日が続いているからだ。温暖なロサンゼルスでも1月の華氏80度超えは異例で、地球温暖化の影響ではないかと考えられる。
近所のコストコの従業員70人超が新型コロナウイルスに感染した。ロサンゼルス郡の3人に1人が感染した可能性がある。コロナ感染症の米国内の死者数は40万人に迫る。「キング牧師の日」が絡む3連休の初日の16日。気が滅入るニュースが多いため、気分転換にビーチに出かけたが、駐車場がいっぱいだ。あきらめてサンタモニカの「プロムナード」を久しぶりに歩いてみた。
観光客と地元住人で賑わうロサンゼルスを代表するショッピング街だが、閉店した小売店の多さに驚いた。簡単に数えただけで10店舗以上のシャッターが閉まったままだ。週末と思えないほどガラガラだった。
黒人差別への抗議行動が全米に拡大した去年6月はじめ、プロムナードで大規模な略奪行為が発生した。傷跡はいまも残り、プロムナードから1ブロック離れた大手銀行のATM機は破壊されたまま放置されていた。ショーウィンドウを分厚い板で塞ぐ小売店が少なくない。営業中の小売店ではいずれも買い物客より状業員の方が多かった。
米株式市場のS&P500種株価指数は2021年の第2週の取引で1.5%下落したが、ダウ工業株30種平均とナスダック総合株価指数と並んで依然として過去最高値水準だ。ワクチンの普及で今年第2四半期(4~6月)以降に米経済が力強く回復することが期待されるなか、米連邦準備理事会(FRB)が超緩和措置を長期に渡り維持することが見込まれる。FRBの緩和継続はパウエル議長がコミットしているが、景気が春以降に本格回復するとは、プロムナードを見る限り想像できない。
バイデン次期米大統領が就任直後に計画している政策が17日までに明らかになった。NBCニュースによると、気候変動対策の枠組み「パリ協定」への復帰、イスラム諸国からの入国制限の破棄、学生ローンと家賃滞納者立ち退き制限の延長、マスク着用の義務化に関する大統領令を就任初日の20日に発動する。14日に発表した1.9兆ドル(約200兆円)規模の経済対策案では、幅広いコロナ対策に加え、人種差別対策も盛り込まれた。コロナと経済問題、地球温暖化、差別。米国で暮らす多くの人が感じる問題への対策が多く盛り込まれた。
NBCニュースの有権者を対象にした最新の世論調査では、バイデン氏の支持率が61%だった。しかし、共和党のバイデン氏の支持率は21%に留まった。ウェブ・メディアのアクシオスの調査では、共和党支持者の多くは依然としてトランプ大統領が再選されることを望んでいることがわかった。6日の議事堂襲撃事件以降も共和党支持者のトランプ人気は変わらない。バイデン氏はトランプ政権の4年間を大転換したい意向だ。しかし、米国の傷は非常に深く、国家分断の解消は決して容易ではない。
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Market Editors 松島 新(まつしま あらた)福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て2011年からマーケット・エディターズの編集長として米国ロサンゼルスを拠点に情報を発信