【日経QUICKニュース(NQN) 中元大輔】18日の国内債券市場で長期金利が比較的大幅な上昇となった。きっかけは日銀が3月に公表する予定の政策点検に伴い「長期金利操作の変動幅を拡大する可能性がある」との時事通信による16日の報道だ。政策点検を巡ってはこれまでも様々な観測報道が飛び交ってきたが、今月20~21日の金融政策決定会合を目前とするタイミングでの今回の報道に債券相場の反応は大きくなった。
■金利上昇を容認?
長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは18日午前に一時、前週末比0.020%高い(価格は安い)0.050%に上昇した。2020年11月4日以来、2カ月半ぶりの高い水準となった。債券売りが増えたのは、報道をきっかけに日銀が長期金利の上昇を容認するのではないかとの見方が広がったためだ。
日銀は16年に長期金利をゼロ%程度に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)という現行の金融政策の枠組みを導入した。現在は上下0.2%程度の変動を認めている。だが、新型コロナウイルスの感染拡大による金融・資本市場の混乱が落ち着いた昨年4月以降、長期金利は下限が同4月のマイナス0.055%、上限が同8月の0.055%と極めて狭い範囲内での動きにとどまっている。
米国では長期金利に上昇の兆しがみえており、節目の1%を超えてきた。対照的に動きの乏しい国内長期金利は、債券市場の機能低下への懸念を強めている。
■気になる点検の内容
3月の政策点検は、現行の政策の枠組みは変えず、時間がかかるとみられる物価目標の達成まで長期的に金融緩和を続けるための調整を狙ったものだ。みずほ証券の丹治倫敦氏は「長期金利が過度に低位安定することへの日銀の危機感の表れ」と話す。債券市場の機能低下という副作用が緩和長期化の弊害の一つになるのであれば、容認する変動幅拡大を通じて金利変動を促すのは選択肢になるとみられる。
日銀の黒田東彦総裁は昨年12月、低い超長期国債の利回りは「保険会社や年金基金の運用利回り低下などの影響を及ぼす」と改めて強調した。超長期債の利回り上昇は「超長期債の買い入れオペ減額だけでは実現が難しい」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美氏)との見方も多い。このため「長期金利の上昇によって超長期債利回りの上昇を促す」(野村証券の中島武信氏)ことを狙っているのかもしれない。