【日経QUICKニュース(NQN) 宮尾克弥】半導体製造装置の関連株は新型コロナウイルス禍のなか日本株をけん引する存在となった。デジタル化の急速な進行による半導体需要の増大は想定以上で、対応するため台湾積体電路製造(TSMC)は2021年の設備投資計画を最大280億ドル(約2兆9000億円)と公表した。事前予想は200億ドル程度との見方が多く、ファウンドリー(半導体受託生産会社)最大手による多額の設備投資は半導体製造装置各社に追い風となる。20年4~12月期決算の注目点と先行きを市場関係者に聞いた。
■東エレク、アドテスト、ディスコは上方修正か 設備投資は強い
今中能夫・楽天証券経済研究所チーフアナリスト
半導体需要は新型コロナの感染拡大による在宅勤務の普及でパソコン、データセンター向け以外に、高速通信規格「5G」向けスマホ向けも加わっている。車載向けの汎用半導体が不足し自動車生産が滞っているように、生産能力の増強は待ったなしの好調ぶりだ。4~12月期決算に数字の上振れとして出ているはずで、東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、ディスコ(6146)などは21年3月期の業績予想を上方修正してくる可能性がある。
※東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコの株価と日経平均株価の相対チャート。(2019年末を100として指数化)
TSMCが公表した21年の設備投資額計画は予想より大きく衝撃的な金額だったが、22年はさらに増強に動くのではないか。回路線幅が5ナノ(ナノは10億分の1)メートルの生産増に加え、最先端の半導体となる3ナノの生産を始めるため設備投資が必要になる。TSMC以外に韓国のサムスン電子も需要に対応して設備投資を積み増す可能性もあるだけに、製造装置企業は長期の業績拡大局面に入っている。
半導体メモリーも5Gスマホの普及でいずれ供給能力の増大を迫られる。リスクというより懸念材料として、受注増大に半導体製造装置側の生産能力が対応できるのかという点がある。新型コロナが収束しておらず、装置を設置する技術者を海外へ派遣できるのかも不透明だ。設備投資の速さに対応できず、半導体製造装置各社が「機会損失」となる可能性は否定できない。
■受注見通しに注目、株価に上振れ余地
花屋武・SMBC日興証券アナリスト
半導体製造装置各社の20年4~12月期決算は旺盛な半導体需要を背景とした好業績や受注拡大を確認することになりそうだ。決算説明会では足元の状況だけではなく22年3月期(来期)とその先をどう見ているかの話が出そうで、どれほど半導体需要と設備投資の拡大を数字上でどう見ているかは注目したい。半導体製造装置の株価水準は高く、すでに23年3月期の業績成長まで織り込みつつあるが、今後の受注に関する見通しをどれほど強気に見ているかで上値余地もあるだろう。
半導体需要と生産拡大に伴う製造装置への受注状況は、話を聞く限り相当強い。TSMCは21年の設備投資額の見通しを市場想定を上回る250億~280億ドルと公表し、強気の見方を裏付けた。EUV(極端紫外線)対応露光装置の前倒し調達や米国工場の建設費も含む金額ではあるが、それだけ先行きの半導体需要を強く見ている証拠だ。半導体製造装置各社に好材料なのは間違いない。
価格の低迷が続き懸念材料の一つだった半導体メモリー向け設備投資は5Gスマホの販売増で投資が再拡大する余地はあると見ている。特にDRAM価格は明らかに底入れした。ただ、NANDは依然として在庫が多く、価格が上向かない場合はNANDの設備投資を控える可能性はある。もっとも半導体全体の需要増を考えれば、あまり気にする必要はない。
【主な半導体関連企業の決算発表予定】
・ディスコ(6146) | 1月26日 |
・アドバンテスト(6857) | 1月28日 |
・東京エレクトロン(8035) | 1月28日 |
・SCREENホールディングス(7735) | 1月28日 |
・レーザーテック(6920) | 2月1日 |
・東京精密(7729) | 2月2日 |
【東エレクの連結業績と市場予想】
20年4~12月市場予想 | 19年4~12月期 | 18年4~12月期 | |
売上高 | 9837億円 | 8038億円 | 9592億円 |
営業利益 | 2170億円 | 1671億円 | 2341億円 |
純利益 | 1648億円 | 1280億円 | 1841億円 |
(注)18年4~12月期、19年4~12月期は実績。20年4~12月期は4~9月期実績と21日時点のQUICKコンセンサス(10~12月期予想)を合算。