【日経QUICKニュース(NQN) 山田周吾】1月の円相場は「円安・ドル高」となった。年初から米長期金利の上昇でドル買いが優勢の地合いとなり、1月27日の米株価急落によるドル買いが1月の方向を決定づけた。外国為替市場では「1月効果」と呼ばれるアノマリー(経験則)がある。1月相場と年間の騰落が同じ方向になりやすい、というものだ。2021年についてはドル高を予想する声が多いが、その通りに相場が動けば、この経験則が2年ぶりに的中することになる。
■「1月効果」の的中率は70%
1月29日の円の対ドル相場は米市場でも1ドル=104円台半ばで弱含んで推移した。今年の円相場が103円台前半で始まったため、1月は円安・ドル高が1円強進んだことになる。1月上旬に米政権・議会で「ブルーウエーブ」が実現すると、米長期金利が大きく上昇し、ドル買い・円売りが加速。27日の為替市場では株価急落を受けたドル買いが先行したことで、103円台後半でもみ合いだった円相場は104円台まで切り下がった。
為替市場では「1月効果」という経験則が取り上げられることがある。例えば1月の月足で初値より終値の方が円高・ドル安なら、年間を通じても円高となり、その逆も成り立つというものだ。みずほ証券によれば、過去47年間での的中率は70%(33勝14敗)と高い水準だ。21年1月は円安・ドル高という流れが比較的鮮明にみられたが、「1月効果」に当てはめれば、21年末は年初の103円台前半よりも円安・ドル高が進行する、ということになる。
■「今年は違和感が無い」
「1月効果」を説明する材料として、1~12月のタームで運用を計画・評価する外国人投資家の動きがあげられる。みずほ証券の上野泰也氏は「1~12月というカレンダーイヤーで動く海外の機関投資家が、年初に年間のシナリオを決定し、1月以降もそれに沿った投資を行うことが影響しているのではないか」と説明する。
21年の円ドル相場について、最終的にはドル高が進行するとの見方が多い。ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は新型コロナウイルスのワクチン普及では米国が日本を先行しているとし、「21年後半から米経済の正常化が見込まれ、米長期金利の一段高と材料にドル買いが優勢となるだろう」と予測する。みずほ証券の上野氏も「20年後半から円の買い持ち高が積み上がっており、今後はポジションの巻き戻しも想定される。21年はやや円安方向に傾きやすい地合いで、1月効果についても今年は違和感が無い」という。
「1月効果」には注意点もある。市場で「不確実性」が高まった年には経験則が通用しない例が多いことだ。米国でサブプライムローン問題が発生した07年や、世界各国で新型コロナの感染が広がった20年などは、年初に想定していた相場観が崩壊したため、この経験則は外れた。21年も金融・資本市場を急変させる要因には注意が必要だが、「1月効果」については頭の片隅に入れておいても良いだろう。
<金融用語>
アノマリーとは
アノマリーとは、効率的市場仮説では説明のつかない証券価格の変則性。明確な理論や根拠があるわけではないが当たっているかもしれないとされる相場の経験則や事象である場合が多い。英語表記はAnomaly。 たとえば、「1月効果」、「5月に売り逃げろ」(Sell in May and go away)、「曜日効果」、「モメンタム効果」、「リターン・リバーサル」、「低PER効果」、「小型株効果」などがある。