【NQNニューヨーク 川内資子】今週(2月1日~5日)の米株式相場は神経質な展開か。先週は個人投資家やヘッジファンドによる売買で一部銘柄の株価が乱高下した。この問題に関係する材料に投資家が敏感に反応しそうだ。ネット通販のアマゾン・ドット・コムなど主要企業による2020年10~12月期決算の発表に加え、1月の雇用統計など重要指標の発表も多い。
■個人投資家の取引制限に米世論反発
前週のダウ工業株30種平均は2週ぶりに下落し、週間の下げ幅は1014ドルと昨年10月下旬以来の大きさだった。このところ個人投資家の投機的な取引を背景に、ゲーム専門店のゲームストップなど一部銘柄が急騰。売り持ちの買い戻しを迫られたヘッジファンドなどによる株式の換金売りなどで市場が混乱するとの警戒感が強まった。米新興ネット証券ロビンフッドは1月28日に価格変動の大きい銘柄の一部取引を制限したが、週末29日に取引を限定的に再開した。ゲームストップなどの株価が再び急騰すると、投資家のリスク回避姿勢が増した。
今週も価格変動の大きい銘柄に関する動きが相場動向を左右しそうだ。個人投資家の取引制限に対しては米世論や政治家の反発が強まっている。ヘッジファンドなどプロの投資家は取引を続けられたためだ。米証券取引委員会(SEC)は29日、個人投資家を主要顧客とする証券会社が個別株の取引を一時停止した件について、調査を始めると発表した。
民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は1月29日にSECに対して、株価乱高下の状況報告などを求める質問状を送った。同氏がメンバーとなる上院銀行委員会は今回の騒動について公聴会を開く調整を進めているという。個人投資家の株式売買を巡る環境が定まらず、先行き不透明感も強い。投資家がゲームストップなどの株価を注視する状態が当面続きそうだ。
■決算や経済指標の発表
米主要企業の決算発表は佳境を迎える。2日にはアマゾンと検索サイトのアルファベットが発表する。コロナ禍でも高い成長力を示してきただけに市場の業績期待は強い。3日発表の決済サービスのペイパル・ホールディングスの決算への関心も高い。同社は昨年末にかけて価格が急騰した暗号資産(仮想通貨)、ビットコインの関連事業を拡大している。ビットコインの業績への影響や経営陣がどのような見通しを示すのかが注目される。
経済指標では5日に1月の雇用統計が発表される。ダウ・ジョーンズ通信のまとめでは、市場では非農業部門の雇用者数は前月比10万5000人程度の増加が予想されている。新型コロナウイルスの感染拡大による行動制限が続くなかで、雇用者数が8カ月ぶりのマイナスとなった昨年12月と比べて持ち直せば、米景気の懸念は和らぎそうだ。サプライマネジメント協会(ISM)が1日と3日にそれぞれ発表する1月の製造業と非製造業景況感指数はともに小幅な低下が見込まれている。
<金融用語>
ヘッジファンドとは
ヘッジファンドとは、米国で生まれた私的な投資組合(特定・少数の投資家や金融機関などから出資を受ける)の一種で、規制の及ばない租税回避地域に設立する投資会社も多くある。 ジョージ・ソロス氏が率いるクォンタム・ファンド(各国の金利・通貨政策の歪みを狙って大きな資金を動かす「マクロ・ファンド」)が有名で、極めて投機的なファンドと思われがちである。 しかし、「へッジ(リスク回避)」という名前が示す通り、リスクをコントロールする様々なタイプがある。