【日経QUICKニュース(NQN) 山田周吾】国際商品市場で銀相場の急騰が続いている。投稿型オンライン掲示板「レディット」で銀への投資が取り上げられ、銀先物への注目度が急上昇。書き込みがあった先週1月28日から日本時間2月1日までのニューヨーク銀先物の上昇率は最大15%にもなった。銀の上場投資信託(ETF)への資金流入も過去最高を記録した。この急騰はいつまで続くのか。市場関係者の間では「一時的に過ぎない」と冷静な見解が優勢のようだ。
■何らかの規制が入るのでは
国際指標となるNY銀相場は週明けの日本時間1日の取引でも急騰した。取引の中心である3月物は一時1トロイオンス29.25ドルと、前週末の清算値から9%近く上昇した。銀上昇の流れは国内市場にも波及し、中心限月である12月物は一時1グラム97.3円と約5カ月ぶり高値まで上昇。銀の上昇で金、白金など他の貴金属も買われている。
銀価格の急騰は他の市場にも波及した。銀を対象とする代表的なETFである「iシェアーズ・シルバー・トラスト」には29日に過去最大の資金が流入。またブルームバーグ通信は銀貨などを取り扱う一部のサイトが1月31日、需要過多の影響で対応できなくなったと報じている。
急騰が続く銀相場の今後はどうなるか。市場では「一時的な動きで収束する」との見方が優勢のようだ。楽天証券経済研究所の吉田哲氏は「米国で個人投資家の投機的な取引を規制する動きが広がっており、銀相場の上昇にも何らかの規制が入るとの警戒感から調整局面に入るのではないか」と指摘した。
■中長期的には?
銀相場の上昇といえば、1979年から80年にかけてのハント兄弟の銀買い占めが有名だ。約半年間で1トロイオンス10ドル弱から一時50ドル台まで暴騰した。ハント事件と「レディット」起因の銀急騰を比べても、今回の方が上昇余地が少ないとの指摘があった。マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘氏は「ハント兄弟の時は1つの買い手が先物だけでなく現物まで引き受けていた。今回は複数の買い手が投機的な動きに相乗りしている」と分析。上昇が一服した際、現物を引き取る予定がない先物の買い手は売りに転じやすいと指摘した。
ただ、中長期的にみると銀相場はじり高基調となるとの声が聞かれた。1月に発足したバイデン新政権は環境対策に注力する姿勢を打ち出している。銀は太陽光発電のソーラーパネルに使用されるため、21年から銀需要は拡大するとみられる。日本貴金属マーケット協会の池水雄一氏は「世界の銀鉱山生産も16年から減少し続けており、供給面でも銀上昇の材料がみられる」と話す。「短期的には調整、中長期的にはじり高」の認識で銀相場の動向をみていく必要がありそうだ。
<金融用語>
投機とは
投機とは、短期的なキャピタルゲインの取得を目的とした投資。思惑に基づいた売買なども含む。 ただしこの概念はあくまでも抽象的なものであり、実際には、「投資」との区別を、明確にすることができないことが多い。