QUICK資産運用研究所は昨年11月に「個人の資産形成に関する意識調査」を実施し、約5000人に資産形成の取り組み状況などを聞いた。その集計結果から世帯金融資産5000万円以上の回答者にフォーカスし、富裕層・準富裕層の「お金の事情」について傾向をまとめてみた。
■「老後資金に不安」が3割 税金・相続対策も
回答者の人数を保有資産額別に分けてみると、富裕層・準富裕層は290人。マス層(3000万円未満)が2582人、アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満)が241人で、資産額を「回答したくない」は1962人だった。
お金に関して困っていることや不安に感じていることを聞いたところ、富裕層・準富裕層の1位は「特に困っていることはない」(39.7%)というさすがの結果だった。ただ、「老後資金」(30.7%)への不安もそこそこ高い。全体の回答と比べ割合が高かったのは、「税金対策」と「相続・贈与問題」に関する悩みだった。
■7割が「資産運用の必要性感じる」 全体を上回る
資産形成・資産運用の必要性を感じるか聞いたところ、富裕層・準富裕層では約7割が必要性を感じると回答した。マス層やアッパーマス層と比べて高い水準。内訳は「非常に必要性を感じる」が36.9%、「やや必要性を感じる」が32.8%だった。
「資産形成・資産運用の必要性を感じますか」という質問だったため、必要があると感じているのが資産形成なのか資産運用かは判別できない。必要性を感じる理由としては、回答者全体と同じように「老後不安、公的年金だけでは足りないと感じるから」(71.8%)が最も多かった。
回答者全体より割合が高かったのは、「銀行に預けていても増えない(預金の金利が低い)から」や「投資が趣味、楽しいから」といった理由で、資産運用への積極性が見て取れた。また、運用を通じた企業への応援や社会貢献の意欲も全体と比べ高かった。ESG(環境、社会、企業統治)投資について聞いた別の設問でも、金融資産が多くなるにつれ関心が高まる結果となった。
■選ぶ金融商品は「利回りの高さ」を重視
利用したい金融商品についての回答では、富裕層ほどリスク許容度が高いことが分かった。「収益性はどんなに低くても、元本割れの可能性が絶対にない商品」と回答した割合は、富裕層・準富裕層で21.4%にとどまった。回答者全体では43.7%にのぼったのに対し、富裕層・準富裕層は元本割れを許容する傾向にある。
一方、富裕層・準富裕層が運用商品を選ぶときに重視することの1位は「利回りの高さ」(46.8%)。回答者全体では僅差で首位だった「値上がり期待」(43.3%)を上回った。金融資産をしっかり築いている分、大幅な利益の追求より堅実に増やすことを重視する人が多かった。
■資産運用を相談したいのは「証券会社」
資産運用への意欲がある富裕層・準富裕層は誰を信用し、誰に相談したいと考えているのだろうか。「信頼する金融機関はどこですか」と聞いたところ、「とても信頼している」と「まあまあ信頼している」の合計が最も高かったのは大手銀行だった。地域金融機関が続いた。
ずばり「誰に相談したいか」という質問では、「誰にも相談しない」を除く回答で最も多かったのが「証券会社の営業担当者」(21.7%)。「金融機関から独立したアドバイザー」(17.9%)が2番目だった。運用に詳しい知識を持つ専門家がいることを期待して、証券の営業担当者や独立系のアドバイザーに相談したい人が多いようだ。