【日経QUICKニュース(NQN) 田中俊行】ソニー(6758)の業績が好調だ。3日の取引終了後に2020年4~12月期の連結決算(米国会計基準)を発表し、同時に21年3月期の業績見通しを大幅に上方修正した。巣ごもり需要を取り込むゲーム部門だけでなく全事業の見通しを従来予想から引き上げた。4日以降の株式市場では想定を超える上方修正を好感する買いが集まりそうだ。
■決算のポイント
・今期業績を上方修正、市場予想を大幅に上回る
・20年10~12月期、営業益は20%増 事前のアナリスト予想は減益
・PS5の販売台数、20年10~12月期は450万台
今回修正した21年3月期の業績予想は、純利益が前期比86%増の1兆850億円と初の1兆円超えとなる。営業利益は同11%増の9400億円で、従来予想(17%減の7000億円)から一転増益となり、アナリスト予想平均のQUICKコンセンサス(7520億円)も大きく上回る水準だ。
ソニーは全事業で従来見通しから上振れすると見込む。営業益の会社計画の上方修正幅を事業別にみると、テレビの増収が寄与したエレキ部門(580億円)、スマートフォン向け画像センサーが予想より伸びた半導体部門(550億円)、巣ごもり需要を背景にゲームソフトが好調なゲーム部門(400億円)が目立つ。
※ソニーの業績推移(21年3月期は会社予想)
同時に発表した20年10~12月期の業績も強い。営業利益は前年同期比20%増の3592億円と、33%減益の2023億円としていた市場予想(1月27日時点、12社)を大きく超過した。アナリストの見立てと異なった要因の1つはゲーム事業だろう。新型の家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)5」の販促費がかさむとの声が多かったが、蓋を開けるとゲームソフトやオンライン対戦を楽しむネットワークサービスが補う想定外の構図となった。十時裕樹副社長は3日の決算説明会で「ゲーム事業の収益構造は大きく変化している」と強調した。
市場参加者が注目していたPS5の初年度の出荷台数については、「当年度中の販売目標である760万台以上の達成に向け、ここまで計画通りに進捗している」(十時氏)と述べるにとどめたが、20年10~12月期の販売台数は450万台と進捗は良好だ。ジャパンネクスト証券が運営する私設取引システム(PTS)では3日夕に東証終値を460円(4.3%)上回る1万1095円を付けた。収益性の向上をサプライズと捉えた投資家の買いが先行する展開となるだろう。
十時CFOは3日の会見でPS5は単体では逆ざやだが、コントローラーや周辺機器を含めてみれば、22年3月期にほぼニュートラルと発言。 PS5ユーザーのPS Plusの加入率は87%と高いとも説明していました。懸念もあった半導体は華為技術向けが一部再開。今後の伸びを見込んで在庫積み増し、ウエハ投入も増やすなどかなり先を見据えた強気の姿勢。エンタメに関しては「良い投資の機会が増えている」として、これまでの3年間よりもスケールをあげた戦略投資の実行を目指すとも。 来期減益の可能性もあるにしても、先々を見据えた方向感は聞いている限り強気と感じます。