【QUICK Market Eyes 本吉亮】社外取締役の需要が高まっているようだ。金融庁と東証は1月末にコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)改定に向けた有識者会議を開催し、親子上場の問題点などを議論した。上場子会社の少数株主の利益を損なわないようにするには、会社から独立した社外取締役の役割が重要で、増員すべきだとする意見が相次いだという。改正会社法の施行により3月から上場企業などで社外取締役の設置が義務化されることもあり、「社外役員マッチングサービス」を開始したビザスク(4490)に対する注目度が高まると思われる。
※ビザスク株価と日経平均株価の相対チャート。(2020年3月10日を100として指数化)
■高まる社外役員へのニーズにマッチ
日本は親子上場が多く、東証に上場する企業の約3割が上場子会社など支配株主や主要株主を持つとされる。親子上場では、親会社が上場子会社を完全子会社化する際に、安く株式を取得したい親会社と子会社の少数株主の間で利益が相反する問題がある。有識者会議では少数株主を守るため、上場子会社は企業トップ経験者や弁護士などの独立社外取締役を「最低でも取締役の3分の1、できれば過半数に増やすべきだ」との意見が多かったという。独立社外取締役を3分の1以上選任する上場子会社は15%にとどまっており、今後社外取締役を選任するニーズが高まると思われる。
*決算説明資料より
そこで注目したいのが、ビジネス分野に特化したナレッジプラットフォームを運営するビザスクだ。同社は専門的な知見や経験を持つプロ(アドバイザー)と情報収集を行う法人顧客をマッチングし、対面やウェブ会議、電話などを通じてピンポイントで相談できるスポットコンサルサービスを展開する。
国内外13万人のアドバイザーが登録しており、サービス利用者のニーズに合わせてマッチングを行うことで、利用者がプロから1時間インタビューできる。新規事業の立ち上げに関する業界研究やニーズ調査、DX(デジタルトランスフォーメーション)などに対する新しい知見を求めたい際に有効で、ビザスクを利用して事業を伸ばしている企業は多いという。働き方改革による副業容認で仕事の合間などのすきま時間にビジネス相談に応じるスポットコンサルのアドバイザー登録者が伸び、コロナ禍のテレワーク推奨を背景に短時間で相談できるスポットコンサルは使い勝手がよくマッチング実績は累計で約8万件に達している。
同社は「スポットコンサル」をフルサポートマッチングする「ビザスクinterview」を軸に、BtoB Webアンケート調査「エキスパートサーベイ」、新規事業創出支援サービス「ビザスクproject」など、ニーズに合わせた様々な知見マッチングサービスを開発してきたが、高まる社外役員へのニーズに特化したマッチングサービス「ビザスクboard」を開始した。
同社の13万名を超える知見データベースには、既に上場企業役員経験者、DX推進人材、上場経験を有するスタートアップ人材、大手企業の幹部経験者(女性含む)など社外取締役の候補者となりうる優秀な人材が多数登録されており、社外取締役のニーズ上昇で注目を集めそうだ。
■売上高が61.5%増
足元の業績も好調だ。ビザスクが1月中旬に発表した2020年3~11月期連結決算は,売上高に相当する営業収益が前年同期比61.5%増の11億2600万円、営業利益は2.1倍の1億3100万円と大幅増収増益。主力の「ビザスクinterview」はコロナ禍でも好調で、積極的なマーケティング施策が奏功して国内事業法人および海外顧客が拡大した。会社側は足元の業績好調を踏まえ、通期営業利益予想を従来の5500万円から9000万円に引き上げた。4Qは緊急事態宣言の再発令の影響や積極投資を計画して、営業赤字を見込んでいることになるが保守的な感が否めず、業績上振れ期待は強いと思われる。株価は直近高値から2割以上下落しており、調整一巡感からの戻りに期待をしたい。
<金融用語>
コーポレートガバナンス・コードとは
2013年に日本政府が閣議決定した「日本再興戦略(Japan is Back)」及び2014年の改定版で、成長戦略として掲げた3つのアクションプランの一つ「日本産業再興プラン」の具体的施策である「コーポレートガバナンス(企業統治)」の強化を官民挙げて実行する上での規範。「コード」は規則を意味するが、細則の規定集ではなく原則を示したもの。2015年6月から適用されている。 本コードは大きく5つの基本原則で構成され、(1)株主の権利・平等性の確保、(2)株主以外のステークホルダーとの適切な協働、(3)適切な情報開示と透明性の確保、(4)取締役会等の責務、(5)株主の対話、に関する指針が示されている。 「日本版スチュワードシップ・コード」が機関投資家や投資信託の運用会社、年金基金などの責任原則であるのに対し、本コードは上場企業に適用される。両コードともに法的拘束力は無いが、「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)」の精神の下、原則を実施するか、さもなければ実施しない理由を説明するか求めている。 本コードの策定を受け、東京証券取引所は上場制度を一部見直し、同様に2015年6月から制度改正が適用となっている。従来からあるコーポレートガバナンス報告書に本コードの実施に関する情報開示を義務付け、実施しない場合はその理由の明記が必要。政策保有株(持ち合い株)に関する方針や取締役会に関する開示などが中心であり、会社の持続的成長・中長期的企業価値向上に寄与する独立社外取締役を2名以上選任することも新たな上場制度に盛り込まれた。 2018年6月には初の改訂版を公表。政策保有株削減の促進、経営トップの選任・解任手続きの透明性、女性や外国人の登用による取締役会の多様化を求めた。