【日経QUICKニュース(NQN) 大沢一将】トヨタ自動車(7203)は2月10日13時25分に、2020年4~12月期(第3四半期)の連結決算を発表する。決算や、その後の説明会での注目点をまとめた。
※トヨタ自動車株価と日経平均株価の相対チャート。(2020年始を100として指数化)
【トヨタ決算、ここがポイント】
・21年3月期通期の業績予想を上方修正するか、修正幅はどの程度か
・半導体不足の生産への影響は
■21年3月期通期の業績予想を上方修正するか、修正幅はどの程度か
アイシン精機(7259)やデンソー(6902)など、先に20年4~12月期の決算を発表した系列の部品メーカーは相次いで通期(21年3月期)の業績予想を上方修正しており、トヨタの上方修正もほぼ確実とみられている。会社予想の通期の連結売上高は前期比13%減の26兆円、営業利益は46%減の1兆3000億円。一方、市場予想の平均であるQUICKコンセンサスはそれぞれ26兆3976億円、1兆5381億円(いずれも1月29日時点、18社)となっている。
※トヨタ自動車の業績(21年3月期は会社予想)参照
自動車販売は昨年の後半にかけて、北米や中国を中心に強い基調が続いた。3日付の日本経済新聞は「トヨタは21年1~12月の世界生産で前年実績比17%増の約920万台を計画している」と報じた。業況の強さはある程度は株価に織り込み済みとみられ、上方修正幅が不十分とみなされれば材料出尽くしの売りに押される可能性もある。
為替レートもポイントだ。トヨタは下期(20年10月~21年3月期)の前提為替レートをドル円で1ドル=105円としていたが、20年10~12月の為替相場は1ドル=103円台で推移する時間も長かった。「トヨタの保守的な姿勢からすると、21年1~3月期(第4四半期)の前提を1ドル=100円と円高方向に修正する可能性もある。その場合、営業利益で500億円ほどの減益要因となる」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリスト)。利益の上方修正幅をみる際に注意したい。
20年4~12月期の実績については、諸経費の増減に加え、原価改善努力によるコスト削減の幅などに注目だ。傘下の日野自動車(7205)でも、同期間はコスト抑制による利益の上振れがみられた。
■半導体不足の生産への影響は
リスクは車載半導体の不足の影響だ。連日、完成車メーカー各社の減産が伝わっている。台湾積体電路製造(TSMC)など半導体受託生産会社(ファウンドリー)のキャパシティー不足が原因とみられる。
もっとも、トヨタの生産への影響は他社よりも小さいとの見方も少なくない。その理由として「トヨタの半導体調達先は、半導体を内製する日系メーカーの比重が相対的に高いとみられる」(三菱UFJモルガンの杉本氏)ことが挙がる。3日付の日本経済新聞は「半導体不足(によるトヨタの生産へ)の影響は年間で5000~6000台の下振れ要因にとどまるもようだ」と報じている。実際の影響度や正常化の時期などに関する会社側の見解に注目だ。
トヨタはコロナ禍による業績の落ち込みからの脱却が鮮明となりつつある。そうしたなか「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の時代に向けた先行投資を、どの分野でどれほど増加させるのか注目したい」(東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリスト)。今月中には静岡県裾野市で、トヨタが進める最先端技術の実験都市「ウーブン・シティ」を着工する。市場の目はより先へと移り始めている。
<金融用語>
QUICKコンセンサスとは
QUICKコンセンサスとは、証券会社や調査会社のアナリストが予想した各企業の業績予想や株価レーティングを金融情報ベンダーのQUICKが独自に集計したもの。企業業績に対する市場予想(コンセンサス)を示す。一方、「QUICKコンセンサス・マクロ」は、国内総生産や鉱工業生産指数など経済統計について、エコノミストの予想を取りまとめたものをいう。 QUICKコンセンサスを利用したものとして、QUICKコンセンサスと会社予想の業績を比較した「QUICK決算星取表」や「決算サプライズレシオ」、QUICKコンセンサスの変化をディフュージョン・インデックス(DI)という指数にした「QUICKコンセンサスDI」などがある。また、「QUICKコンセンサス・プラス」は、アナリストの予想対象外の銘柄に会社発表の業績予想などを採用して、国内上場企業の業績予想を100%カバーしたものをいう。
最近の傾向として中国での販売の伸び、トヨタ・レクサスブランドの伸びもポイントと思います。