【日経QUICKニュース(NQN) 山田周吾】外国為替市場でオーストラリア(豪)ドルの堅調さが目立つ。豪ドル相場の支えになっているのは資源価格の上昇だ。豪ドルと相関性が高い国際商品指数は、新型コロナウイルスの感染拡大前の水準を回復し、さらに上昇の勢いが止まらない。今週に入り、対円で約2年2カ月ぶりの高値をつけた豪ドル相場は、遠のいた金融緩和の縮小という向かい風もはねのけ、上昇基調が続くとの見方が広がる。
■原油高の追い風
10日の東京外国為替市場で豪ドルの対円相場は前日比で上昇し、1豪ドル=80円台後半で推移した。豪ウエストパック銀行が発表した2月の消費者信頼感指数が改善したことが支援材料となった。豪ドルは一段と強含んでいる。8日には対円で2018年12月以来、約2年2カ月ぶりに81円台に乗せた。対米ドルでも持ち直している。米国での追加経済対策への期待を背景にした米ドル高で、1月下旬の豪ドル相場は弱含んだものの、足元では年初につけた水準である1豪ドル=0.77米ドル台で推移している。
堅調な豪ドル相場の背景には原油高がある。「世界の原油産出量のうち、豪州が占める割合は0.5%前後」(原油に詳しいエコノミスト)と、豪州の原油産出量そのものは多くはない。一方、液化天然ガス(LNG)では主要輸出国で、エネルギー相場の上昇にLNGが連れ高するため、足元の原油高は豪ドル上昇の追い風として意識される。
原油以外でも、貴金属や農作物などの商品先物相場が上昇している。国際商品の総合的な値動きを示すロイター・コアコモディティーCRB指数は、9日時点で184付近と、新型コロナ前の20年1月上旬以来の水準まで戻している。ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「豪ドルはCRB指数と相関性が高い通貨の代表格で、商品相場の上昇局面では豪ドル買いという傾向は健在だ」と語る。
■薄まる金融緩和の影響力
10日発表の1月の中国消費者物価指数(CPI)が前年同月比で下落するなど、上向きだった中国景気に停滞懸念が広がる。中国需要への期待が大きな支えだった原油や銅価格の先行きには警戒感もある。ただ、CRB指数の主要構成品目である原油の相場については「石油輸出国機構(OPEC)による協調減産によって支えられている」(第一生命経済研究所の西浜徹氏)と供給要因への言及が聞かれ、中国景気の動向がCRB指数に大きな影響は与えないとの声もある。
豪中銀が先週、資産買い入れ策を延長すると決めたことで、金融緩和の長期化観測で豪ドル相場が下押しされるとの見方も広がっていた。ただ、ワクチン普及による景気回復への期待を背景にした金融市場での「リスクオン」ムードの高まりもあって、豪ドル相場への影響は限られた。資源相場についてはこの先、一時的な調整リスクも警戒されるが、欧米主導の世界景気の回復期待が高まる中では資源高の環境は変わらず、資源価格との連動性が高い豪ドルは堅調な値動きが続きそうだ。