※SBGの決算説明会のテキストマイニング
【QUICK Market Eyes 阿部 哲太郎】ソフトバンクグループ(SBG、9984)が2月8日にオンラインで開いた2020年4~12月期連結決算(国際会計基準)の説明会では、「金の卵」、「AI(人工知能)」、「仕組み」などへの言及が目立った。説明会の内容をテキストマイニングし、分析した。
20年4~12月期の連結純利益は前年同期比6.4倍の3兆551億円となり、日本企業として過去最高となった。傘下のソフトバンク・ビジョン・ファンドが投資する米デリバリーサービスのドアダッシュや配車大手のウーバー・テクノロジーズなど投資先の株価上昇などが反映された。ドアダッシュへは累計で約700億円を投資したが、20年末時点の時価は9300億円あまりに膨らみ投資収益は13倍強になった。
SBG本体による投資事業も、投資していたスプリントとの合併による対価として取得した米通信キャリアのTモバイル株式の一部売却益などが利益を押し上げた。
孫正義会長兼社長がかねて「この1点だけがSBGの業績の結果を表す物差しである」と定義していた保有株価値から有利子負債を引いたNAV(Net Asset Value、株主価値)は、8日時点で25兆円を超え、前期末の20年3月末に比べて3兆円強増加した。
3兆円を超えた純利益に対して孫氏は「それなりの数字ではあるが、別にさして喜ぶようなものでもない。40年近く会社を経営してまだこの程度であることが非常に恥ずかしいというのが、正直な気持ち」との感想を述べた。
孫氏は「SBGをガチョウに例えるならば、情報革命にのみ特化した貝殻だとか、いろんな餌を食べて、お腹に卵を貯めていく。白い卵がいずれ金の卵となって生まれていく」と表現し、「SBGは金の卵を産む製造業」であると強調した。
投資したうえで売却や新規株式公開(IPO)などで大きな利益を生み出すことを「金の卵を1個生み出した」と例えた。インターネットの黎明期に多くのスタートアップ企業に投資し、米国のヤフーや日本のヤフージャパン、トレンドマイクロなど多くの金の卵を生み出したと振り返った。さらに、AI革命によって様々な産業がAIに塗り替えられると感じたことから17年にビジョン・ファンドをスタートし、もう一度金の卵を産み始めたと付け加えた。
AI革命のプレゼンテーションは多くの時間を費やした。20年9月に発表した傘下の英国半導体設計のアームの売却もAI革命をにらんでのことだ。スマートフォン向けのCPU(中央演算装置)の世界シェアをほぼ独占するアームと最先端のGPU(画像処理半導体)技術をもつ米半導体のエヌビディアが1つになり、「AI時代をリードするコンピューティング企業となる」(孫氏)とみている。
インターネット革命では広告と小売りのたった2つの産業しか置き換えられなかったが、AI革命により医療、教育、移動、自動運転などより多くの産業の置き換えが加速するとして投資先であるAIスタートアップを多数紹介した。
ビジョンファンドは、技術、ビジネスモデル、市場の分析を徹底する各専門チームによって投資の意思決定をしている。孫氏は「この仕組みづくりこそが経営だ」とし、「家内工業のようなファンドから工業化すると、手作業から製造ラインとして流れ作業の仕組みを作りやすい。なぜならスケールを持っているからだ」とビジョン・ファンドの優位性を強調した。
毎度毎度面白い説明会ですが、今回はビジョンが豊富なイベントでした。 VipThinkも面白い企業