(この記事は2021年2月26日に公開したものを再構成しました)
【QUICK Money World 辰巳 華世】株式相場を把握するのに株価指数はかかせない情報です。世界の株式市場にはその国を代表する株価指数がありますが、今回は、米国の代表的な株価指数の一つであるS&P500種株価指数の概要や採用銘柄、活用の仕方などをご紹介します。米国株は上昇基調を背景に、日本の個人投資家の注目が高まっています。
S&P500とは?
S&P500種株価指数(エスアンドピーファイブハンドレッド)は、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが算出したアメリカの代表的な株価指数です。評価通貨は米ドルです。ニューヨーク証券取引所、NASDAQに上場している代表的な約500銘柄より算出される時価総額加重平均株価指数です。採用銘柄数が約500と多く、米国の主要銘柄の多くがS&P500に含まれています。米国株式市場の時価総額の約90%を網羅しているので、米国相場全体の動向を知るうえで役立つ指標です。
そもそも株価指数とは、ある取引所や特定の銘柄群の株価の動きを表すものです。ある時点を基準にして、その後の株価の増減を表しています。そのため、連続性をもって時系列で株価の動きを把握することができます。
世界の株式市場には各国を代表する株価指数があり、その株価指数をみることでその国の株式相場の状態を把握することができます。日本の代表的な株価指数といえば、日経平均株価や東証株価指数などがあります。
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S&P500の組入銘柄は?
S&P500の組入銘柄は、時価総額、流動性、浮動株比率、業績など様々な条件によってスクリーニング(選別)され決定します。時価総額は82億ドル以上、業績は4四半期連続で利益を計上していることなどが採用条件となっています。世界産業分類基準(GICS)に基づいて分類された11産業の中から代表的な銘柄が選別されています。S&P500は、米国を代表する銘柄が満遍なく組み入れられてはいますが、「情報通信」や「ヘルスケア」の割合が高い傾向があります。
<S&P500の組入銘柄の時価総額上位>
順位 | 銘柄名 | コード | 時価総額 (百万USD) |
1 | エヌビディア | NVDA | 3,335,268 |
2 | マイクロソフト | MSFT | 3,317,335 |
3 | アップル | AAPL | 3,285,940 |
4 | アルファベット C | GOOG | 2,171,401 |
5 | アルファベット A | GOOGL | 2,171,401 |
6 | アマゾン・ドット・コム | AMZN | 1,902,435 |
7 | メタ・プラットフォームズA | META | 1,266,973 |
8 | バークシャーハザウェイ B | BRK.B | 881,641 |
9 | イーライリリー | LLY | 847,248 |
10 | ブロードコム | AVGO | 839,052 |
11 | テスラ | TSLA | 589,554 |
12 | JPモルガン・チェース | JPM | 565,718 |
13 | ビザ A | V | 547,512 |
14 | ウォルマート | WMT | 543,743 |
15 | エクソン・モービル | XOM | 490,670 |
16 | ユナイテッド・ヘルス・グ | UNH | 442,751 |
17 | マスターカード A | MA | 418,429 |
18 | プロクター・アンド・ギ | PG | 397,824 |
19 | オラクル | ORCL | 397,545 |
20 | コストコ・ホールセール | COST | 386,033 |
※2024年6月18日時点。集計対象は、ダウ平均構成銘柄およびNASDAQ100構成銘柄。
S&P500は、定期的に銘柄を確認し、必要に応じて銘柄を入れ替えています。2023年12月には、配車サービス大手の米ウーバーテクノロジーズなど3銘柄が新たにS&P500に追加されました。
一般的に株価指数に採用されると、その銘柄の株価は上昇する傾向があります。指数に連動した運用成績をめざすパッシブ型で運用する投資家たちは、運用する投資信託などを指数と連動させるためにその銘柄を必ず組み入れる必要があります。株価指数への新規採用が発表されると、パッシブ運用の投資家の買いに加え、その買いを期待した思惑的な買いなども加わり、その銘柄の株価が上昇しやすくなります。
実際、S&P500への採用が発表されたウーバーの株価は上昇しました。好調な業績に加え、23年12月18日からのS&P500へのウーバー株組み入れに伴い、自分たちのポートフォリオにもウーバー株を追加しなければならない年金基金や上場投資信託(ETF)などの投資家の買いも集めました。10月下旬から24年1月中旬にかけて株価は約60%上昇しました。
ダウ平均、ナスダック指数との違いは?
米国株のニュースでよく「NYダウ」、「ダウ平均」などという言葉を見かけると思います。これは、ダウ工業株30種平均と呼ばれる米国の株価指数です。米国の代表的な30銘柄で構成されており、S&P500と異なり単純平均型の指数です。米金融大手ゴールドマン・サックス、米アップル、米マイクロソフト、カード大手の米アメリカン・エキスプレス(アメックス)などが採用されています。2024年2月、ダウ平均の構成銘柄にアマゾン・ドット・コムが新規採用されました。指数を算出する米S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの発表文によると、インターネット通販を手掛けるアマゾンは消費関連銘柄として組み入れたとしています。米国の代表的な指数にもう一つ、「ナスダック総合株価指数」がありますが、こちらは米国のNASDAQ市場に上場する全銘柄で構成された時価総額加重平均型の指数です。半導体などテック銘柄主導での株価上昇局面では、ダウ平均がナスダック総合株価指数の上昇率に見劣りします。今後はダウ平均にハイテク株の組み入れが増えることも想定されます。
S&P500は約500銘柄ありますが、ダウ平均は採用銘柄が30と少ないです。そのため、ダウ平均は、個別銘柄で株価が大きく変動した際は影響を受けやすいです。米国株式相場を把握する際、S&P500だけ、ダウ平均だけ確認するのではなく、両方の指数を確認すると良いでしょう。両方の指数が似た動きをする場合もあるし、ダウ平均の動きが大きい場合は、ある特定な銘柄が大きく動いたのだなと、その日のマーケットの特徴を感じることもできます。S&P500、ダウ平均とも米国を代表する株価指数なので、米国株式相場を把握するうえではどちらも気にかけておいた方が良い指標といえます。
緑:S&P500、赤:ダウ平均、青:ナスダック指数、白:日経平均。2002年初を100として指数化。
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S&P500の活用方法――投資信託やETFは?
S&P500は、米国の株式相場全体の動きを把握するのに役立ちます。ダウ平均や日本の日経平均株価、東証株価指数などと同じように一つの指標としてチェックすると良いでしょう。
下の表はS&P500と日経平均株価の過去20年の比較チャートです。
過去20年において、S&P500と日経平均株価はおおむね右肩上がりに成長していることがわかります。ただ、日経平均とS&P500を比較した場合、特に2008年リーマンショック以降のここ10年は、S&P500の株価の上昇が目立ちます。これは、インターネットなど情報技術の進歩を背景に、米ハイテク大手5社「GAFAM(グーグルの親会社アルファベット、アップル、旧フェイスブックのメタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトの総称)」など米国を代表する企業の成長が大きく影響しています。
GAFAMはもはや私たちの生活になくてはならないサービスを展開する企業であり、今後も米国経済の中心として世界経済の牽引することが予想されます。「GAFAM」はS&P500の組入銘柄上位にも入っており、米国を代表する指数であるS&P500には引き続き大きな注目が集まります。ハイテク銘柄の台頭はめざましく、電気自動車のテスラ、半導体メーカーのエヌビディアを先の5銘柄に加えて「マグニフィセント・セブン(壮大な7銘柄)」と称されることもあります。
世界経済の中心である米国株に投資をしたいと考える投資家は多いです。米国を代表する指数であるS&P500に是非投資をしたいと考える投資家も多いと思いますが、残念なことに指数であるS&P500に直接投資をすることはできません。しかし、S&P500の値動きに連動して同じ様なリターンを得ることができる投資信託やETF(上場投資信託)などがありますので見てみましょう。
S&P500に関連する投資信託は、証券会社などから多く提供されています。SBIアセットマネジメント「SBI・バンガード・S&P500」、大和アセットマネジメント「iFree S&P500インデックス」など、色々な会社から商品が提供されています。S&P500に連動する投資信託は、米国の主要銘柄500社に分散投資ができます。また、S&P500指数に連動するため、S&P500の動きをウォッチしていればその投資信託の値動きも分かり、簡単に値動きを確認できるので米国株投資に興味がある初心者にも人気があります。
たとえば「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2020」では、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は9位と上位に入っています。
連動するETF(上場投資信託)も多く、ステート・ストリートの「SPDR S&P500」(1557)やブラックロックの「iシェアーズ S&P 500」(1655)のほか、日興アセットマネジメントの「上場米国株式 S&P500」(2521)のように為替ヘッジをかけたものもあります。
S&P500とオルカンの違いとは?
24年に新しい少額非課税投資(NISA)がスタートし、投資信託への投資が増えています。中でも、「オルカン」と呼ばれる全世界株に投資する公募投信「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が人気を集めています。1月の国内公募の追加型株式投資信託(上場投資信託=ETF=を除く)への資金流入額では、このオルカンへの資金流入が急増しています。
ここでは、人気を集めるオルカンについて簡単に紹介し、S&P500との違いを確認してみましょう。
オルカンは、三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」のことです。国内、海外の先進国・新興国すべてを含む全世界の株式を投資対象とするインデックスファンドです。人気を集める大きな理由が3つあります。1つ目は、たった1本の投資信託への投資で、全世界の株式に投資できる点、2つ目は、販売手数料が安い点、3つ目は、分配金を出さないので効率よく運用できる点です。ちなみにオルカンは商標登録されています。
一方、S&P500を見てみましょう。先程も説明したようにS&P500は指数なので、指数であるS&P500に直接投資をすることはできません。S&P500の値動きに連動して同じ様なリターンを得ることができる投資信託やETF(上場投資信託)に投資することになります。オルカンと同じeMAXSIS Slimシリーズに「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」があります。こちらも新NISA開始で人気を集め、1月の国内公募の追加型株式投資信託(上場投資信託=ETF=を除く)への資金流入額はオルカンに次いで2位となりました。
オルカンとS&P500の違いは何か。簡単に言えば、投資対象が「全世界型」か「米国株型」かの違いです。オルカンは投資対象が世界中の株式なのに対し、S&P500はS&P500 に採用された米国の503の銘柄が投資対象です。もちろんオルカンは世界中の株式が対象なので、オルカンの中には米国株も含まれています。
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まとめ
S&P500は、米国の主要約500銘柄を採用した株価指数です。米国の株式相場を把握するのに役立つ指数です。また、連動する投資信託やETFも幅広く存在しています。S&P500をチェックし、株価の動向を読み取り、投資に活かしましょう。
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私も疑問に思って公式ページを見ましたが、A株C株両方入っているみたいですね。しかも構成銘柄数は実は505銘柄のようです。 https://www.spglobal.com/spdji/en/indices/equity/sp-500/#data