4月1日付で大阪取引所の社長に就任した岩永守幸氏が、報道各社のインタビューに応じた。9月に予定する売買システムの更新をきっかけに「(売買しやすい)環境を整えて取引参加者を増やしたい」と意欲をみせるとともに、「商品の柔軟な拡充にもつなげる」と話した。主な一問一答は以下の通り。(聞き手は日経QUICKニュース 内山佑輔、田中俊行)
報道各社のインタビューに応じる岩永守幸・大阪取引所社長(東証で)
――就任にあたっての抱負をお聞かせ下さい。
「大取が提供するデリバティブ(金融派生商品)市場は、社会的意義があり価格変動の恐れのある資産に対してリスクヘッジ(回避)機能を与えることが使命だ。そうした機能をしっかりと発揮させるため、様々な形態の投資家が集まって、高い流動性が保たれた取引所を目指していく」
「9月には大取の売買システム『J―GATE』を5年ぶりに更新する予定だ。昨年10月の件(東京証券取引所のシステム障害)があるので、参加者や世間にご迷惑をおかけしないように進めたい」
「日本取引所グループ(JPX)が誕生して間もない頃、大取はデリバティブ市場に特化した位置づけだった。しかし9月の売買システム更新のタイミングで、関東にあるシステムのバックアップセンターを大阪に移す。デリバティブ市場を担うだけではなく、JPXの西の拠点としての存在意義が高まる」
■22年秋にも祝日取引開始へ
――20年7月には、東京商品取引所から貴金属や農産物の取引を大取に移管しました。
「JPXの『総合取引所』化が実現したわけだが、期待していたほど参加者や売買高が増えているわけではない。売買システムへ接続するにあたってコストがかかりすぎるといった取引参加者が増えない背景を愚直に探りつつ、安価に接続できる環境を整えるなどして参入障壁を取り除き、取引参加者を増やしていく」
「海外投資家だけでなく国内投資家からのニーズも強い祝日取引も計画している。日本は(取引所の)休場日が多い。日本が休みの日に価格変動が起きてしまうと、売りたくても売れない、買いたくても買えない状況が発生して、ヘッジ機能を十分に果たすことができない。9月にJ―GATEを更新してから1年後にあたる22年秋にも、祝日取引を開始したい」
■仮想通貨の先物、考える段階でない
――商品の拡充についてはどのように考えていますか。
「これまで商品を拡充するにあたって障害になっていたのが、取引システムの開発期間だった。新しい商品の提供を決めてシステム開発に着手しても、完成まで1年程度かかっていた。この期間をJ―GATEの更新をきっかけに短縮する。今回のJ―GATE更新のコンセプトは『ローンチ・タイムリー』だ。開発期間を3カ月程度まで縮め、商品の柔軟な拡充にもつなげる」
――海外では上場例もある暗号資産(仮想通貨)に関連した先物商品については。
「社会的に意義があるものに対して、価格変動リスクがあるならばヘッジ機能を提供していくのが大取の役割だ。仮想通貨についても、決済通貨として社会的な意義があり、それに対するヘッジが必要だという判断に至れば、デリバティブ市場でも関連した商品を提供することになるだろう。しかし、現時点で仮想通貨に決済通貨としての意義を見いだせるか疑問だ。まだ具体的に仮想通貨に関連した先物商品の提供を考える段階ではない」
<略歴>
岩永守幸(いわなが・もりゆき)氏 1984年東京証券取引所入社。2008年東京証券取引所グループ執行役。13年日本取引所グループ常務執行役。20年日本証券クリアリング機構副社長。
〔日経QUICKニュース(NQN)〕