(初回公開日2021年6月18日16:00)
【QUICK Money World 辰巳 華世】株式市場で日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)といった指数そのものを買いたいと思ったことはありませんか?一つずつ採用銘柄を購入すれば現実的には可能ですが、莫大な資金が必要です。でも、上場投資信託(ETF)を購入すれば、株式市場で指数の採用銘柄を全て買ったのとほぼ同じ投資効果を得ることができます。今回はそんな便利なETFの基本的な説明、投資信託や株式との違い、ETFの仕組み、メリット・デメリット、長期投資に向いているかどうかについて分かりやすく解説します。
ETFとは
ETFとは「Exchange Traded Fund」の略称で、証券取引所に上場している投資信託のことです。ETFには日経平均株価やTOPIX、などの株価指数と連動を目指す投資信託などがあります。株式だけでなく、債券やREIT(不動産投資信託)、コモディティ(商品)や通貨などいろいろな種類の指数と連動するETFがあります。また、国内だけでなく米S&P500種株価指数など海外の指数と連動するETFもあります。
例えば、日経平均株価と連動するETFは、日経平均株価とほぼ同じ動きをするように運用されます。なので、このETFを買うことは、日経平均採用銘柄をすべて買っているのとほぼ同じ効果があります。
ETFは上場しているので、証券会社を通じて取引をします。一般的な投資信託であれば銀行などからも購入することができますが、ETFは個別株式と同じように証券会社でのみ取引が可能です。ETFは株式と同じようにリアルタイムで売買できる投資信託です。
ETFと投資信託や株とどう違うの?
ETFと投資信託の違い
ETFと投資信託は似ている部分もありますが、違う部分も多々あります。大きな括りでは、ETFは、投資信託に分類されます。両者の似ているところは、1つの銘柄ではなく、いろいろな銘柄をまとめて一つの金融商品としている点です。投資信託もETFも、日経平均株価など株価指数と連動した運用を目指す商品があります。分配金も出るものがあります。
ETFと投資信託との決定的な違いは上場しているかどうかです。
先程説明したようにETFは上場しています。そのため、ETFはリアルタイムで価格が動き、証券取引所の取引時間内のみ取引することができます。一方、投資信託は、価格(基準価額)の変動が1日1回になります。
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ETFと株との違い
ETFは株式と同じように上場しているので、株式と同じように売買できます。株式投資は特定の企業に投資をしますが、ETFは日経平均株価に連動させるなど、複数の銘柄を取りまとめた商品になります。そのため、個別銘柄の投資より分散投資になり、リスクが軽減できます。
ETFの仕組み
ETFは株式同様リアルタイムに売買ができます。証券取引所に上場する株式の価格を決めるのは売り手と買い手の需給です。ETFも上場しているので基本的には需給で価格が決まります。しかし、ETFの場合、ETFの需給だけで価格が決まってしまうと問題が起こることがあります。
例えば、日経平均株価に連動するETFで考えてみましょう。日経平均株価があまり動かない時に、そのETFを売りたい人が多くて売られすぎてしまうと、ETFの価格が下落し、日経平均株価に連動するはずのETFが連動しなくなってしまいます。こういったことが起こらないようにETFには、株式と異なる仕組みがあります。
ETFには、2つの市場があります。一つは、「流通市場」と呼ばれる一般の投資家が売買する市場です。証券会社に注文を出し、証券会社がその注文を取引所へ取り次ぎます。いわゆる一般的な株式を取引する市場と同じです。
もう一つが「発行市場」と呼ばれる裏の市場です。この市場の参加者は、指定参加者と呼ばれる証券会社、ETFを運用する運用会社、ETFの資産の保管管理をする信託銀行です。
先程お話した様に、日経平均株価はあまり動いていないのに、そのETFを売りたい人が多くて、ETFの需給でETFの価格が下落してしまう。こういったことが起こらない様に発行市場では、需給の調整が行われています。
指定参加者の証券会社が、その時に応じて売り手や買い手側になり流通市場で適切な価格で取引ができるよう、ETFや現物株の需給を調整します。その際、運用会社は新たなETFの設定や、逆にETFの交換・解約などをします。たとえば、売りが多いときはETFの買い手に回り、ETFを解約して受け取った現物株を市場で売却したり、逆に買いが多い場合は現物株を買ってETFを新規に設定し、ETFの売り手に回ったりします。こうした取引を裁定取引と呼びます。
出所:東証ホームページ
この様に発行市場があることによって、一般投資家が流通市場でETFを株式同様に売買することができます。
ETFの配当・分配金はどうなる?
ETFは投資信託と同様、分配金があります。ETFは税法に基づき、決算期間中に発生した利子や配当といった収益から、信託報酬等の費用を差し引いた全額を分配することになっています。もっとも金や原油先物など、配当や利息が発生しない指標を対象としているETFの場合は、分配金がないことがあります。
ETFのメリット
ETFにはたくさんのメリットがあります。
分散投資効果が高い
ETFを買うことは、分散投資になるのでリスク軽減に繋がります。例えば、日経平均株価に連動するETFを購入すれば、日経平均株価採用の225銘柄へ分散投資をしている効果が期待できます。
値動きが分かりやすい
日経平均株価やTOPIXなどに連動するETFであれば、その株価指数と同じような値動きをします。ETFの値動きをわざわざ見なくても、日経平均株価やTOPIXなどの代表的な株価指数をチェックすることで、保有しているETFの値動きが予測できることになります。
運用コストが低い
運用コストが投資信託に比べて低く、長期投資に適している点も魅力です。ETFは売買手数料と保有にかかる信託報酬がコストとしてかかりますが、売買手数料も信託報酬も、一般的な投資信託と比較すると安くなります。なお、ETFの売買手数料については、株式と同じ取り扱いになります。
ETFのデメリット
一方、ETFにはデメリットもあります。
自動積み立てがしにくい
長期投資に適してはいるものの投資信託に比べると、自動積立サービスやつみたてNISAを利用できる機会・対象商品が少ないです。証券会社によってはETFの自動積立サービスがない証券会社もあり、つみたてNISA対象のETFも少数となっています。投資する場合は、自分でその都度購入する必要があるので、売買手数料がその度にかかるなどが難点です。
分配金が自動的に再投資されない
ETFにも投資信託の様に分配金があります。投資信託の場合は、分配金の再投資を選択すれば自動的に再投資してくれますが、ETFの場合は分配金が自動的に再投資されません。再投資したい場合は手動で分配金を再投資する必要があります。
ちなみに、ETFの分配金は、税法で本決算期間中に出た利子や配当などの収益から信託報酬などの費用を控除した全額を分配することになっています。分配金は、年1、年2など銘柄によってその頻度が異なります。対象としている指標が配当や利息がない資産のETFには配当はありません。
価格が乖離するリスクがある
ETFには、上場商品としての市場価格と投資信託としての基準価額があります。市場価格はリアルタイムで変動しますが、基準価額は1日1回取引終了後に決まります。その日の市場価格はリアルタイムで動く一方で、基準価額は前日の価格で固定されており、その日の状況によって市場価格と基準価額が乖離する可能性があります。ただ、一般的には、ETFは指数と連動することを目指しており、先程説明した発行市場での「裁定取引」などによって、乖離がそれほど大きく広がることはありません。
上場廃止のリスクがある
また、ETFは上場しているので、上場廃止の基準に従い、上場廃止となるリスクもあります。上場廃止は頻繁にあるわけではありませんが、可能性はゼロではないことを知っておく必要があります。
ETFの中には複雑な商品性のものがあり、思いがけない値動きをすることも覚えておきましょう。ETFと類似の商品であるETN(上場投資証券)では過去、「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数と逆の値動きをする商品で、たった1日のうちに価値の9割が消失する事態が発生しました。
ETFは長期投資にも向いている?
ETFは、株式の側面と投資信託の側面を併せ持った金融商品といえます。安定した運用ができ、且つ、リアルタイムで値動きをするため、短期投資・長期投資のどちらにも活用ができます。加えて、信託報酬が安いので経費率が低くなるので長期の保有に適しています。ただし、原油先物やボラティリティ指数先物などを対象にした先物型ETFは理論上、長期保有に向かない(長期で右肩上がりが見込みにくい)商品設計であることには注意してください。
<!– –>まとめ
ETFは、少額かつ低コストで分散投資ができる便利な金融商品です。日経平均株価に連動したETFなど値動きが分かりやすい商品が多いので投資初心者にもおすすめです。
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