【QUICK Market Eyes 鈴木孝太朗、長谷部博史】新型コロナウイルス禍で変わった消費の形が、新常態の下で定着しつつある。総務省が7月6日発表した5月の家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は物価変動の影響を除いた実質で前年同月比11.6%増加した。それでも2年前に比べると6.5%少ない水準で、回復は鈍い。景気は緩やかながらも回復が見込まれるものの、テレワークの広がりなどを背景にスーツや化粧品など一部品目には需要が戻らないままだ。
在宅勤務・外出自粛で消費減
総務省統計局が、コロナ禍で消費行動に大きな影響がみられた品目をまとめた。5月の品目ごとの支出を2年前の同月と比べると、背広服が74%減少した。在宅勤務の広がりでビジネススーツや礼服を着る機会が大幅に減ったためだ。学校行事などの再開を受けて4月は前年同月比で急回復した。だが5月は再び前年同月比26.1%減に沈み、「反動増」とも言い難い状況だ。
出張などビジネス関連を中心に移動の機会が減り、2年前比では鉄道運賃や宿泊料、タクシー代も減少。外出自粛の影響でファンデーションや口紅など化粧品関連も落ち込みが目立つ。
代替需要
一方、巣ごもり需要の影響で一部の食品は需要増が続く。パスタ、冷凍調理食品、チューハイ・カクテルは2年前に比べて支出が増えた。外での飲食にかける支出が大幅減となり、代替需要が生じている。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「テレワークの定着で鉄道運賃やスーツへの支出が元に戻ることは想定しにくい」と指摘する。足元ではワクチン接種の進展で経済の正常化も期待されるが、需要は品目によって回復に差がつきそうだ。
消費行動に大きな影響がみられた主な項目(5月、2年前比増減率)
項目名 | 増減率 |
パスタ | 23.5 |
生鮮肉 | 12.9 |
冷凍調理食品 | 37 |
チューハイ・カクテル | 43.7 |
食事代 | ▲38.9 |
飲酒代 | ▲89.1 |
家事用消耗品(ウェットティッシュなど) | 18.7 |
背広服 | ▲74.0 |
保健用消耗品(マスクなど) | 72.8 |
鉄道運賃 | ▲72.6 |
バス代 | ▲57.4 |
タクシー代 | ▲51.0 |
航空運賃 | ▲68.5 |
有料道路料 | ▲58.8 |
ガソリン | ▲21.2 |
宿泊料 | ▲59.9 |
パック旅行費 | ▲87.8 |
映画・演劇などの入場料 | ▲53.7 |
文化施設入場料 | ▲67.3 |
遊園地入場・乗り物代 | ▲83.1 |
浴用・洗顔せっけん | 13.2 |
ファンデーション | ▲33.5 |
口紅 | ▲51.5 |
※21年5月と19年5月を物価変動を除く実質ベースで比べた。単位は%。▲はマイナス