国内の大手証券5社が公表した共通KPI(成果指標、2021年3月末時点)によると、投資信託の運用損益がプラスになっている顧客の割合が前年比で大幅に増加した。野村証券では投信を保有している顧客の92.0%が運用益を確保し、1年前の43.0%から急回復した。
■運用益の顧客割合、過去最高に
大手証券5社は野村証券、大和証券、SMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券。共通KPIの公表が始まった2018年以降を表にまとめたところ、5社とも21年3月末時点で運用損益がプラスの顧客割合が前年を大きく上回った。過去3年分と比べても、それぞれ最も高い水準にある。
前年はコロナショックの影響で投信運用が落ち込み、損失を抱える顧客の割合が各社とも過半を占めていた。今年は相場が持ち直したため、ほとんどの顧客の運用損益がプラスになった。
■4回目の共通KPI、認知度は低迷
金融庁が投信の販売会社に自主的な公表を求めている共通KPIは、今年で4回目となる。販売会社が顧客本位で取り組んでいるかどうかを「見える化」するのが狙い。販売会社は投信やファンドラップを対象にした運用損益別の顧客割合のほか、預かり残高上位20銘柄のコスト・リターンの分布とリスク・リターンの分布(いずれも過去5年の年率換算)を毎年3月末時点で取りまとめて公表している。
金融庁は今年1月にインターネット経由で「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査」(有効回答者数:9829人)を実施。「金融機関が公表している顧客本位の業務運営に関する取組方針・KPIを確認したことはありますか」との質問に対し、投資経験者では「知らない」との回答が59.3%、未経験者では82.1%にのぼった。4年目を迎えた共通KPIの認知度はまだ低位にとどまっている。