(初回公開日2021年7月30日15:00)
【QUICK Money World 辰巳 華世】脱炭素社会の実現に向け再生可能エネルギーへの需要が高まっています。中でも、洋上風力発電は国を挙げて積極的な導入の動きがあり注目を集めています。今回は洋上風力発電の基本的な説明から、関連銘柄とは、洋上風力発電が注目される理由、今後の展開や、注目銘柄まで分かりやすく解説します。
洋上風力発電とは
洋上風力発電とは、風力発電のうち海上や湖面に建設されたものです。脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの需要が高まる中、洋上風力発電に注目が集まっています。日本政府は2020年末のクリーン成長戦略で、2040年までに最大で原子力発電45基分の電力を洋上風力発電でまかなう目標を立てています。
洋上風力発電は、太陽光に比べ、昼夜問わず一日中発電できます。また、洋上風力発電は、陸上に比べ海上の方が風が強く大きな風力を持続的に得ることができる点、騒音問題や万が一事故があった時に人的被害が少ない点も魅力です。
洋上風力発電には、「着床式洋上風力発電」と「浮体式洋上風力発電」の2種類があります。「着床式洋上風力発電」は、海底に土台を固定しています。水深が浅い海での発電に向いています。一方、「浮体式洋上風力発電」は、水深50メートル以上の土台を設置できない海域での風力発電です。海上に基礎を浮かべて風力発電装置を設置します。
これまでの世界の洋上風力発電は「着床式」が主流でした。ただ、日本の沖合は水深が深く「着床式」を設置できる海面が限られています。日本政府が掲げる洋上風力発電の目標を実現するには、「浮体式洋上風力発電」のコストダウンを含めた技術の進歩が必要と言われています。
洋上風力発電は、環境に優しく設置する場所が確保しやすいなどの理由から世界中の国や地域で積極的に導入されています。海外ではイギリス、ドイツ、デンマーク、オランダ、アメリカ、台湾などで導入が進んでいます。
日本は海外に比べると、洋上風力発電の導入が遅れていると言えます。ただ、ここにきて脱炭素社会の実現のため国を挙げて洋上風力発電の設置が積極的に進んでいます。国内では青森、秋田、新潟、長崎、千葉等で洋上風力発電の計画が進んでいます。今後も洋上風力発電導入の動きは活発に進むことが考えられます。
洋上風力発電の関連銘柄とは
洋上風力発電の関連銘柄は多岐に渡ります。洋上風力発電機の開発や技術の研究をする企業があります。洋上風力発電は、1基あたりの部品が1万点以上にもなり多くの企業がしのぎを削っています。また、日本の海域に適している「浮体式洋上風力発電」の開発や建設する企業などもあります。海上で発電した電気を保管する蓄電池の開発や変電所まで電気を運ぶケーブルの開発なども関連銘柄です。また、洋上風力の建設には、建設に必要な資材などを運ぶ「SEP(Self Elevating Platform)船」の開発・製造、さらには、建設の前段階の風況調査技術に関連する企業もあります。
洋上風力発電の注目銘柄
洋上風力発電の関連銘柄は多数あります。商社やゼネコン、電力会社、メーカーなど多岐に渡ります。
洋上風力発電の開発・建設では、レノバ(9519)、JFEホールディングス(5411)、日立造船(7004)、東芝(6502)、三菱商事(8058)、住友商事(8053)、コスモスエネルギーホールディングス(5021)などがあります。着床式の支柱の開発で新たな方式を開発した大林組(1802)、浮体式の海中設備で戸田建設(1860)、東京電力ホールディングス(HD、9501)や五洋建設(1893)、三井海洋開発(6269)、東京ガス(9531)なども注目銘柄です。
洋上風力発電建設に必要な部品は多数あり、部品製造分野で恩恵を受ける企業も多数あります。風力発電装置向けのディスクブレーキなどを手掛ける曙ブレーキ(7328)、ブレード用の炭素繊維素材を供給する東レ(3402)、ベアリングのNTN(6472)、ミネベアミツミ(6479)、増速機のユニバンス(7254)などがあります。
洋上風力建設に必要な「SEP船」開発では、五洋建設(1893)や鹿島建設(1812)や日本郵船(9101)、丸紅(8002)などがあり、変電所まで発電した電力を運ぶケーブルは住友電工(5802)、古河電工(5801)、JMACS(5817)などが手掛けています。洋上風力建設・設置のための港湾インフラも関連銘柄で三井海洋(6269)や五洋建設なども注目です。
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洋上風力発電が注目される背景
洋上風力発電が注目される理由の一つは、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギーの需要が高まっているためです。2022年の政府の新たな経済財政運営と回各区の基本方針(骨太の方針)と成長戦略で2050年のカーボンニュートラル実現に向け、脱炭素分野に今後10年間で150兆円規模の官民の投資が必要と示しました。洋上風力発電は、次世代の再生可能エネルギーとして大きな注目を集めています。洋上風力発電は設置場所が海面や湖面なので場所が確保しやすく、大量導入やコスト低減が可能なため、経済効果が期待されています。1基当たりの関連部品数が1万点以上と多く、経済波及効果が非常に大きいと考えられます。洋上風力発電は、風量が安定しており、騒音問題や景観に対する問題も陸地に比べて少ない点も魅力です。
政府は2030年までに1000万キロワット、2040年までに浮体式も含む3000万キロワットから4500万キロワットの発電を目指しています。これは発電能力で原発の30基から45基に相当する規模です。洋上風力発電の部品は1万点以上と部品数が多く、経済波及効果も大きいです。そのため、洋上風力建設にかかる部品製造や設置、その後の維持管理など一連の工程に関する国内調達率を2040年までに60%にする目標も示しています。矢野経済研究所の試算によると、日本の洋上風力発電規模は2025年度に3970億円、2030年度に9200億円規模に成長します。
洋上風力発電は、脱炭素社会の実現に向けて国をあげた取り組みの一つであり今後大きな成長が期待される分野です。
洋上風力発電の今後
これまで日本は海外に比べると洋上風力発電については遅れを取っていました。ただ、ここにきて、脱炭素社会の実現に向けた再生可能エネルギーの需要が高まり、日本政府が積極的に洋上風力発電の設置に取り組んでいます。経済産業省から「2040年に最大45基分の発電能力を目指す」との「洋上風力産業ビジョン」が発表されており、引き続き注目されていく分野です。日本を代表する風力発電産業団体として400社の関連企業が運営する日本風力発電協会(JWPA)は、世界風力会議(GWEC)と共同で「日本洋上風力タスクフォース」を設立し、洋上風力発電の普及に向けて動いています。
まとめ
脱炭素社会の実現に向けてなくてはならない存在になった洋上風力発電。環境改善のために世界に広がっている洋上風力発電関連の銘柄動向を追っていきましょう。
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