SDGsの今を知る VOL.16 クラウドクレジット編集部
SDGs(持続可能な開発目標)17のゴール(目標)。その項目の15個目に掲げられているのが「陸の豊かさも守ろう」です。SDGsでは、2030年までに陸に生息する生態系の保護や回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止や回復、生物の多様性の損失を阻止することを目指しています。
1992年に開催された「地球サミット」以降、森林保護や生態系保護は人類共通の目標になっています。しかし、約30年経った現在でも短期的な経済的利益を優先した森林伐採や密猟等の根絶には至っていません。森林は、洪水などの災害を防ぐダムの役割や、水を浄化する役割、二酸化炭素を吸収する役割などを担っています。また、数多くの動物、植物、昆虫たちが生息する場所でもあります。森林が減少すると、酸性雨や土砂災害、大気汚染、砂漠化、地球温暖化などが起ります。森林の減少により生態系のバランスが崩れると、疫病の蔓延や食料不足など、私たちの生活に直結する深刻な被害が発生します。
SDGs「15. 陸の豊かさも守ろう」に紐づけられる12個のターゲット
SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。「15. 陸の豊かさも守ろう」のターゲットは以下の12個になります。
15-1 | 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。 |
15-2 | 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。 |
15-3 | 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。 |
15-4 | 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。 |
15-5 | 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。 |
15-6 | 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。 |
15-7 | 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。 |
15-8 | 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。 |
15-9 | 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。 |
15-a | 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。 |
15-b | 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。 |
15-c | 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。 |
出所:外務省HP資料に基づいてクラウドクレジット作成
陸の豊かさは生物多様性の観点だけでなく、気候変動問題の観点からも重要です。大気中のCO2濃度は1950年代後半から南極やハワイで観測が開始されましたが、その増加幅が人為起源排出量から予想される幅よりも小さいことが明らかになっています。研究により、その原因は陸域での吸収、つまり森林などによるCO2の吸収だと判明しました。陸域生態系の保全・回復・持続可能な利用の目的は、生物多様性の維持・保全のほかに森林保護による地球温暖化防止があると考えられます。
緑化の状況
アフリカや南米で森林が減少している一方、最新の衛星写真を使用した研究によるとインドや中国においては植林が進み森林が増加しています。植林が進んでいることは望ましいことですが、人の手により作られた人工林は適切な時期に適切な量の伐採をしなければ土砂災害や花粉など別な問題を引き起こす可能性もあります。たとえば、日本は世界有数の森林面積を誇る国ですが人口減少と国際価格競争により林業が衰退した結果、手入れのされない森林や伐採時期を迎えても放置された木が増加しています。「森林の持続可能な経営」を応援する仕組みが、国内外ともに極めて重要です。併せて、気候変動問題や生物多様性損失の問題を解決するためには、私たちの日々の消費パターンや企業のサプライチェーンなどを変革することも必要不可欠になっています。
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クラウドクレジット株式会社 :「日本の個人投資家と世界の信用市場をつなぐ」をコーポレートミッションとして掲げ、日本の個人投資家から集めた資金を海外の事業者に融資する貸付型クラウドファンディングを展開。新興国でのインフラ関連案件も多く、現地のマクロ・ミクロ経済動向などに詳しい。累計出資金額約378億円、運用残高約148億円、ユーザー登録数約5万2千人(2021年7月12日時点)
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