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注目テーマ「脱炭素」 カーボンニュートラルの実現に向けた関連銘柄を徹底解説 

(初回公開日2021年12月24日17:00)

【QUICK Money World 辰巳 華世】「脱炭素」や「カーボンニュートラル」といった言葉を最近、新聞やニュースで良く見かけると思います。何となく環境に関連することだというイメージがある人は多いと思いますが、「カーボンニュートラルの実現」とは具体的にどういうことなのか?と聞かれると、意外と曖昧な答えになってしまうかもしれません。今回は、脱炭素とは何か、脱炭素が注目される理由、日本における脱炭素化の課題、脱炭素の関連銘柄や具体的な銘柄について紹介します。

脱炭素とは:世界共通の目標

脱炭素とは、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることです。なぜ脱炭素社会を目指すことが必要なのか。それは、CO2など温室効果ガスが地球温暖化の原因となっていると考えられているからです。地球温暖化は、気候変動問題や氷河が溶けることなどによる海面上昇問題を引き起こすとされています。世界でみれば、熱波による山火事や大雨による洪水、日本でも台風の大型化や大雨などこれまで経験したことがない異常気象の背景ともみられています。

これ以上の地球温暖化を防ぐため、国連による持続可能な開発目標(SDGs)では、「クリーンエネルギー」と「気候変動対策」が掲げられており、世界的に取り組むべき課題として「脱炭素化」「脱炭素社会の実現」に向けた施策が急速に進められています。

日本でも、2050年までに脱炭素社会を実現することを宣言しており、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」としています。温室効果ガスとは、CO2、N2O(一酸化二窒素)、メタン、フロンガスが含まれています。温室効果ガスの中で特に大きな問題となっているのがCO2の排出量の多さです。

カーボンニュートラルとは

脱炭素社会とはCO2など温室効果ガスの排出量の実質ゼロを実現する社会のことです。だた、CO2などの排出を完全にストップすることは難しい現状があります。だから、「実質」としています。CO2などを多少排出しつつも、排出されたCO2などを「吸収」したり「除去」することでプラスマイナスゼロにするので「実質」と表現しています。

温室効果ガスをプラスマイナスゼロにして脱炭素社会を目指す考え方は「カーボンニュートラル」と呼ばれています。炭素のことを英語で「カーボン」と言います。先ほど説明したようにCO2などの排出を完全にゼロにすることは難しく、排出せざるを得なかった分についてはその分を吸収したり除去することで、差し引きゼロにすることを目指しています。これが中立を意味する「ニュートラル」という表現になっています。

▼カーボンニュートラルのイメージ

※カーボンニュートラルのイメージ

出所:環境省

カーボンニュートラルの取り組みは、CO2などを排出しない発電、風力や水力など再生可能な自然エネルギーの使用、電気自動車の普及などをすすめることです。カーボンニュートラルな燃料とは、水素やアンモニアなどCO2(二酸化炭素)、N2O(一酸化二窒素)、メタン、フロンガス等の温室効果ガスを排出しない燃料のことです。

脱炭素が注目される理由:新たな成長機会、競争環境にも影響

地球温暖化が進み地球規模で熱波や大雨など深刻な気候変動問題が起こっていることを受け、世界各国の政府や企業が脱炭素の流れを加速させています。

これまでも地球温暖化について世界各国で話し合いはされてきました。脱炭素社会の実現に向けて大きな転機となったのは2015年に国際的に地球温暖化対策に取り組む「パリ協定」が採択されたことです。パリ協定では、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求することを、日本を含む約190カ国で合意し、地球温暖化防止の国際的枠組みとなりました。前述の通り、日本では2020年10月に政府が「2050年カーボンニュートラル」を宣言しています。2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするために、様々な脱炭素の実現に向けた取り組みが行われていきます。

 

カーボンニュートラルや脱炭素社会への取り組みが次なる成長のエンジンとなる部分もあります。各国政府の脱炭素に向けた国策として取り組みに加え、民間企業も例えば電気自動車の開発や水力や風力発電の開発など新しい技術の開発にしのぎを削っています。ビジネスの世界だけでなく、金融市場でも「脱炭素」は大きなテーマとして注目されており、新しい分野や技術への投資も始まっています。

令和2年度第3次補正予算にて2兆円の「グリーンイノベーション基金」が「国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)に造成され、カーボンニュートラルに取り組む企業の技術開発の支援を行う動きもあります。「2030年までに温室効果ガスの排出を2013年度比で26%削減」という中期目標も掲げられており、特に2020年~2030年までの10年間で関連する業界や企業が成長していくことが予測されています。

▼グリーンイノベーション基金の対象産業

※グリーンイノベーション基金の対象産業

出所:NEDO

加えて金融市場でも、気候変動は重要な投資判断材料となってきています。金融庁と東証は2021年6月にコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を改正し、22年4月から始まる新たな最上位市場「プライム」に上場する企業にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の基準に準ずる気候変動による財務リスクの開示を求めています。今後は非財務情報として、事業の脱炭素化や気候変動対応への開示が求められるようになります。

近年注目されているESG投資も脱炭素と大きく関係しています。ESG投資とは、環境(Envieronment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3つの観点を重視する企業に投資をすることです。

2006年に国連が機関投資家に対して、ESGを投資プロセスに組み入れる 「責任投資原則」(PRI)を提唱したことをきっかけにESG投資が広く注目されるようになりました。日本でも2015年にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRIに署名して話題を集めました。これまでの投資判断は、企業の売上高や利益など業績に重きを置く傾向がありました。しかし、気候変動の問題や人種問題、格差問題など環境や社会問題への関心が高まっていることもあり、最近の投資判断は、社会的課題の解決に繋がる事業長期目線での企業評価に軸足を置く傾向が高まっています。

世界的な気候変動の問題を背景に、ESG投資が広がっており、投資の判断材料として「脱炭素」がキーワードになっています。

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さらに、EU(欧州連合)は、環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける国境炭素調整措置を検討しており、脱炭素の動きが鈍ければ、国際競争で不利になる可能性もあります。排出されるCO2に価格を付ける「カーボンプライシング」の導入も検討されています。カーボンプライシングとは、CO2を排出した企業などは排出量に応じてお金を負担することになる温暖化対策の一つの取り組みです。

日本における脱炭素化の課題

日本は「2050年にカーボンニュートラルを目指す」としていますが、脱炭素社会に向けて多くの課題もあります。日本の現状は、エネルギー源の多くは化石燃料となっています。この状態からどのように再生可能エネルギーなどにシフトしていくのか多くの課題があります。

化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が求められていますが、再生可能エネルギーは、現在の技術だと供給量や安定性などに課題があります。エネルギーの安全性の確保やエネルギー自給率の低さなども懸念されています。

鉄鋼業界のCO2削減も大きな課題です。国内のCO2排出量の1割強、製造業の4割強を鉄鋼業界が占めています。いまの鉄鋼製法は、石炭など大量の化石燃料を使います。炭素など化石燃料ではなく水素などを用いた製造方法を取ることでCO2排出をなくすゼロカーボン・スチールの実現を目指しています。抜本的な生産革新が求められていますが、これから進められていく段階であり多くの課題があります。

 

脱炭素の関連銘柄とは

脱炭素の関連銘柄は多岐に渡ります。多くの企業が脱炭素社会の実現に向けて新しい技術開発を進めています。例えば、再生エネルギー関連企業は太陽光、洋上風力、バイオマスなどを活用した発電への取り組みをしています。また、エネルギー源として水素やアンモニアを活用する取り組みも進んでいます。

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二酸化炭素(CO2)を回収し、貯留・再利用する「CCS」(Carbon dioxide Capture and Storage)や「CCUS」(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)と呼ばれる技術を使った二酸化炭素の地下貯蔵関連の企業も脱炭素の関連銘柄です。「CCUS」は、例えば、排出されたCO2を地下に埋め、油田などの地層を利用して外に漏れないようにする技術です。大気中のCO2排出を減らすことで地球温暖化対策となります。他国でのCO2地下貯蔵に協力した分は、自国の排出量と相殺できる国際ルールがあります。

※CCSの流れ

出所:経済産業省・資源エネルギー庁

CO2排出を減らしたりゼロにするための技術開発を進めている企業も脱炭素銘柄です。例えば、電気自動車(EV)、蓄電池関連企業、スマートハウス関連企業などがあります。

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また、製品などが直接的に脱炭素に繋がらなくても、製造工程などで脱炭素の取り組みを導入している企業も脱炭素銘柄と言えます。国連の持続可能な開発目標(SDGs)に取り組む企業もそうです。SDGsの17のルールには「気候変動に具体的な対策を」「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」など脱炭素に関連する目標が含まれています。

「脱炭素」関連の注目銘柄

脱炭素関連の注目銘柄はたくさんあります。再生エネルギー関連では、太陽光発電などの再生エネ発電施設を開発するレノバ(9519)や、ウエストHD(1407)などがあります。バイオマス発電ではエフオン(9514)、風力発電では日立製作所(6501)などです。省エネのコンサルティングなどではグリムス(3150)や岩崎電気(8924)があります。CCUS関連では三菱重工業(7011)や東芝(6502)、宇部興産(4208)、電源開発(9513)などがあります。

水素関連事業では重工大手や設備メーカーです。川崎重工(7012)、三菱重工業(7011)、IHI(7013)などが水素の製造や供給などの事業化を進めています。アンモニア関連事業では、アンモニアを製造する日産化学(4021)、宇部興産(4208)、三井化学(4183)、昭和電工(4004)などがあります。

EV関連では、トヨタ自動車(7203)やホンダ(7267)など自動車メーカーに加え、自動車メーカー以外からの本格的なEV進出として出光興産(5019)などがあります。EV関連銘柄では、半導体業界も含まれます。EVの中核部品で電力を動力に効率的に変換する装置である「パワー半導体」の製造で東芝(6502)、富士電機(6504)、ローム(6963)などがあります。

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まとめ

脱炭素社会の実現に向け、世界中の国や企業が新しい技術の開発や取り組みを進めています。脱炭素の取り組みはこれ以上の地球温暖化防止だけでなく、新たな経済成長のエンジンとなる取り組みです。今後も脱炭素関連企業の動向に注目していきましょう。

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著者名

QUICK Money World 辰巳 華世

2003年にQUICKに入社後、15年間勤務。約5年にわたり日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)にて記者職に就く。QUICK退社後、フリーランスライターとして2020年より「QUICK Money World」に寄稿。


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