【QUICK Market Eyes 阿部 哲太郎】21日引け後に日本電産(6594)が2021年4~6月期(第1四半期)連結決算(国際会計基準)を発表する。来週末にかけては約730社の決算発表が予定されており、日本企業の4~6月期決算が本格化することもあり、注目となる。
■5つの大波
今期22年3月期の会社予想は売上高が5%増の1兆7000億円、純利益が15%増の1400億円とともに過去最高益更新を見込む。新型コロナウイルス禍に対抗するため収益構造を抜本的に改革するための利益倍増プロジェクト「WPR4」をさらに再強化し、 売上高純利益率は前期の7.5%から今期8.2%に0.7%ptの改善を見込む。
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アナリスト予想の平均であるQUICKコンセンサス(21社、20日)はそれぞれ会社予想を5%、7%上回る1兆7507億円、1491億円と市場の期待値も高い。日本電産ではコロナ後の新「5つの大波」と呼ぶ「5G(次世代通信規格)&サーマルソリューション」「脱炭素化」「省人化」「デジタルデータ爆発」「省人化」「省電力化と殺菌、衛生、巣ごもり」を解決するソリューションビジネスの強化を進め、EV(電気自動車)の駆動用トランクションモーターシステムやパソコン、サーバー向け精密小型モーターなど全方位で収益拡大を狙う。
足元の21年4~6月の市場予想は売上高が前年同期比23%増の4133億円、純利益が52%増の307億円を見込んでいる。
今後の業績や成長の焦点を探るため4月22日に開催された前期の決算説明会の内容をテキストマイニング(※)し、分析したところ、「中国」「10兆円」「材料」などにキーワードに焦点が集まっていた。
※QUICKはSCRIPTS Asia社(米国シアトル)と提携し、日本及びアジアの上場企業による投資家向け説明会などのイベントの議事録を提供している。この議事録を基にテキストマイニングした。
■EV期待
クレディ・スイスの7月6日付の「自動車・自動車部品セクター」リポートによると2021 年1-5 月のグローバル自動車販売におけるxEV(ハイブリッド車などを含めた電動車) 占有率は16.1%、EV 占有率は4.2%と、2020 年(xEV 12%、EV 3.1%)から拡大基調が継続し、電動化トレンドの加速はより鮮明になりつつある。
中でも日本電産の成長をけん引すると期待されるEVの駆動用トランクションモーターシステムは「中国」市場の展開がカギを握る。日本電産のIR動画「世界制覇を狙う!日本電産のEV戦略」によると2020年の世界のEV・PHEV(プラグインハイブリッド車)の販売台数は約300万台で4割が中国、4割が欧州、1割が米国、1割がその他となっている。自動車市場でも世界1位の中国は脱炭素や換気用対策による補助金やナンバー取得優遇などの政策効果もあり、EVの成長が加速している。日電産がモーターを提供している上汽通用五菱の宏光MINIの販売価格50万円のミニEVなど、特に50万円~100万円の低価格のミニEVの販売が伸びている。
関潤社長兼COO(最高執行責任者)は前回説明会で「上汽通用五菱の宏光MINIは本当にすごい勢いで売れている。中国ならびにほかの地域もこれに追従している動きがある」と述べ、佐川急便が近距離車の7200台の軽自動車をすべてEVに切り替え、これを中国から輸入するとの報道についても「日本の眠っているかのようなEVの動きが、中国から輸入された車で目が覚めるんじゃないかと、楽しみに見ている」と語っていた。
「材料」の動向にも関心が集まる。モーターや電子部品の材料となる銅価格は足元では価格が下落したが、前年同期比では大きく上昇していた。物流コスト増や半導体不足も影響が中止される。
前回説明会でアナリストから「材料」の値上がりや取り組みについて問われていたが永守重信会長兼CEO(最高経営責任者)は、「エアコンのモーターなどは銅の値上がりの影響がものすごく大きい。ただし、例えば設計が軽薄短小の技術で銅の値段が30%上がっても銅の使う量を30%減らして原価は変わらないといった取り組みを進めている。中国でシェアが上がっているのはそういう戦い方をしているからだ。」と述べた。関社長は「打ち返しと言っているが材料の価格の上がり幅をスローダウンさせる。それから顧客と協議の上で、そのダメージをシェアしたり、設計を工夫する」と補足し、「どれだけ打ち返せるかが企業の強い弱いになってくる」と4~6月期にコスト増への対抗策に注力すると言及していた。