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安定した高評価のダミアン・ハースト、存命アーティストの今後に期待【Art Market Review】

※LOT.036《Minnie(Pink Glitter)》

7月3日(土)・4日(日)の2日間に渡って開催されたSBIアートオークションのライブ配信型オークション「LIVE STREAM」についてレポートする。

出来高は、落札総額4億4238万7750円(落札手数料含む・以下同)、落札率は、94.4%に達した。落札予想価格上限を超えて落札された作品は全体の65%を占め、大いに盛り上がるセールとなった。SBIアートオークションでは、2021年に入り既に3回のセールが開催されているが、いずれも落札率90%越えの結果を残しており、活況が続いている。

予想を大幅に上回る落札結果

1日目は、国内外で既に高い評価を得ている、草間彌生、アンディ・ウォーホル、ロッカクアヤコなどの作品を中心に、落札予想価格平均79~126万円程度の作品が201点出品された。落札187点、不落札14点、落札率93%。単日の落札総額は、3億7605万5750円だった。

LOT.088、KYNEのオリジナル作品《Untitled》(116.7×91.3㎝、アクリル/キャンバス)が、落札予想価格600~900万円のところ、2070万円で落札され、本セール最高額での落札となった。次に高額落札となったのは、バンクシーのLOT.051《Soup Can: Original》(55.0×35.0㎝、シルクスクリーン)で、落札予想価格500~800万円のところ、2012万5000円で落札された。いずれも落札予想価格上限を大幅に上回る落札結果となり、エキサイティングな競りとなった。

※LOT.088《Untitled》

※LOT.051《Soup Can: Original》

最高落札額は予想の約5倍

2日目には、高騰傾向にあるTIDE、花井祐介、ミスター・ドゥードゥルなどの版画作品を中心に、作品落札予想価格平均12~21万円程度の作品が207点出品された。国内外の新進作家の絵画や写真作品だけでなく、バンクシーやKAWSのアート系フィギュアも多く出品され、その価格帯からもオークションビギナーも楽しめるセール内容となっていた。落札198点、不落札9点、落札率95.6%。単日の札落総額は6633万2000円だった。 細川真希のLOT.281《聞こえるのは水》(130.5×97.5、アクリル/キャンバス)が、落札予想価格30~60万円のところ310万5000円で落札され、2日目の最高落札となっている。

※LOT.281《聞こえるのは水》

アクセス数が最多となったのは、LOT.054インベーダー《LOW RES MONA LISA》(50.0×35.0㎝、シルクスクリーン)、LOT.118青島千穂《Untitled》(17.0×9.5×14.0㎝、セラミック)だった。次点に、KYNE、バンクシー、愛☆まどんな、三島 喜美代、イサム・ノグチ、小松美羽、ロッカク、バックサイドワークス、下田ひかり、Mr. Doodle、マサキ、TIIDE、松山智一、李禹煥、草間彌生、奈良美智、花井祐介が並ぶ。オークション出品歴が浅い作家も多くランクインしており、新しい流れを感じさせる結果となった。

※LOT.054インベーダー《LOW RES MONA LISA》

総じて安定した銘柄

今回は、イギリス生まれの現代美術家ダミアン・ハースト(1965-)に焦点を当て、レポートする。

ハーストは、ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(1990年代の若手コンテンポラリー系アーティストの総称)の先駆け的な存在で、イギリスのアートシーンに最も貢献した存在と言われている。生と死を主なテーマとし、多くの作品を手掛けている。中でも、死んだ動物(サメ、牛など)をホルマリン漬けにしたシリーズ《自然史》が、代表作となっている。

今回のセールでは、5点の出品があった。いずれの作品も、落札予想価格内もしくは落札予想価格上限超えで落札されており、安定したセール結果となっている。5点のうち最高額での落札となったのは、ピンクのグリッター(ラメ)を背景にミニーマウスを大きさの異なるドットを組み合わせ、色と形だけでシンプルにリメイクした作品LOT.036《Minnie(Pink Glitter)》(87.5×70.0㎝、シルクスクリーン・グリッター、ed.150)で、落札予想価格150~250万円のところ、276万円で落札された。

※LOT.036《Minnie(Pink Glitter)》

本作と同一シリーズでブルーのグリッターを背景にミッキーマウスを描いた《Mickey(Blue Glitter)》の出品データを抽出したACF指標より、その動向を読み解く。2017年から2021年まで、落札予想価格平均は150~250万円で設定されている。落札価格平均は、2017年に約270万円を記録して以降2019年まで右肩下がりに推移し、2021年には上昇に転じている。上下動があるものの落札予想価格上限平均付近で推移している。推移時価指数も250万円前後で、大幅な上下動はなく推移している。総じて安定した銘柄といえよう。

※ACF美術品パフォーマンス指標

※ACF美術品時価指数

現在、ハースト初のフランス開催となる個展がカルティエ財団現代美術館(パリ)で開かれている。コロナ禍で生まれた新シリーズ『Cherry Blossoms』の全107点が展示され、注目を集めている。国際的にも評価が高い存命アーティストの今後の活躍が期待される。

※2020年は、該当作品の出品が無かった為、2020年を除いてグラフ化している。
 ※《Mickey》《Minnie》2点セットで出品されていた場合は、1点当たりを算出し、データ化している。

 

(月1回配信します)


※アート・コンサルティング・ファーム提供  ⇒リポート全文はこちら
 ※次回のSBIアートオークション開催予定は9月17日、18日

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