市場関係者は年末まで一段のドル高を予想していた。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した10月の月次調査<外為>で、年末までの円・ドル・ユーロの強弱関係を聞いたところ、8割がドル高を予想した。米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和の縮小(テーパリング)は年内にも開始される可能性が高く、米国の金利が上昇しやすい。中国恒大集団の信用不安問題も世界経済に影をおとすと警戒している。
米国では原油価格が高騰しインフレが加速している。ニューヨーク原油先物相場は1バレル80ドル台の高値圏だ。市場関係者に今後のインフレの行方を聞いたところ、86%がインフレは半年以上続くとみていた。そのうち20%は「1年以上、高インフレが続く」とみる。
原油輸入国である日本では、日本企業がドル調達を増やして円が売られる傾向にあり、1ドル=114円台まで円安が進んだ。SMBC日興証券の野地慎氏は年末までの3通貨の強弱関係を「ドル>円>ユーロ」と予想する。「インフレ要因による円売りが一巡したのち、インフレがリスクオフ要因となりドルや円が買われる」との見立てだ。
9月に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨によると、FRBは11月中旬または12月中旬にはテーパリングに着手すると議論されていた。原油高を背景にインフレが加速するとの見方もあり、高インフレに備えた動きもありそうだ。クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司氏は金融政策の進展度合いから、年末にかけて「ドル>ユーロ>円」になると予想した。「米国の金融政策が早く動くとみられ、ユーロはドルに追随する」という。
恒大集団の信用不安が世界経済に与える影響についても聞いたところ、54%が「中国国内の影響にとどまる」と回答し、35%は「世界経済の減速要因」とみる。「中国景気の減速がリスクオフ要因とされ、ドルや円の買いが入る」(野地氏)との見方もあった。
調査は10月11~13日に実施した。金融機関や外為市場関係者85人が回答した。