トランプ米政権が4月2日に打ち出した「相互関税」に対して市場の動揺が広がっている。7日に発表された4月のQUICK月次調査<株式>は、先行きの「景気・企業業績」への警戒が顕著にあらわれる回答結果となった。前月と比べた回答結果の変調ぶりは2020年の新型コロナウイルス禍以来で、「関税ショック」といってもいい状況だろう。同時に聞いた特別質問では、スチュワードシップ・コードのこれまでの効果と今後の改訂について一定の評価を上げる回答が多かった。
今回の調査期間は4月1~3日。トランプ氏が米国の「解放の日」と掲げ、相互関税の詳細を発表した4月2日が調査期間中に入っていた。
トランプ関税は、事前予想を大きく上回る高い関税率と幅広い対象国・地域となり、株式市場での警戒感は一気に高まった。報復合戦となり貿易戦争となれば世界経済へ影を落とし、企業業績を圧迫しかねない。インフレへの懸念を高める要因ともなる。
日経平均株価の約1年後予想は、単純平均で3万9159円。前月比1011円下がり、1年2カ月ぶりに4万円の大台を下回った。それだけ市場参加者の目線が切り下がっているのがわかる。
今後6カ月程度の株価変動要因として、どう影響を与えると予想するかプラス・マイナスの回答を指数化したものでは、「景気・企業業績」が45.5となり、一気に前月比12.5ポイント落ちた。前月比の低下幅としては、コロナ禍が広がった20年4月に前月比19.8ポイント落ちて27.1となって以来の大きな下落となった。関税による世界景気および企業業績への懸念が募っていることが浮き上がった。
逆に、株価変動要因として指数が上昇したのが「金利動向」。同4.4ポイント上昇し、43.2となった。景気次第によって金融政策に視線が集まる可能性を示している。
最も注目すべきなのは「政治外交」への期待の低下ぶりだ。4月は29.8まで低下し、1994年の調査開始以来、最も低い数値となった。トランプ氏の政策に対する疑念、世界的な分断の深まり、国内政治への期待感の後退などが絡んだ結果といえそうだ。
また今後6カ月程度の株価に影響を与える投資主体として、「外国人」の指数も低下が目立つ。4月は41.1となり、前月比2.4ポイント下がった。これもコロナ禍直後の20年4月以来の低さとなった。外国人買いへの期待の後退を示している。
国内株式への投資スタンスとして、「かなり引き上げる」「やや引き上げる」の回答が足して30%となり、1年ぶりの高さとなった。株価の下落に伴い、配分を引き上げる動きが出てきたのは注目できる点だろう。
スチュワードシップ・コードへの評価を聞いた特別質問では、策定から11年間の効果について、「大いに評価できる」は12%、「どちらかといえば評価できる」が56%となり、プラスに評価する回答が全体の2/3を超えた。
また新たなコードの改定についても「大いに意味がある」(10%)、「どちらかといえば意味がある」(60%)で全体の70%が、前向きな評価だった。重要な改定としては、「実質株主の透明化」が55%と最も多く、次いで「協働エンゲージメントの強化」が26%と続いた。
石破政権がいつまで続くかについては、「夏の参議院選挙まで」が60%と最多の回答。「4月まで」(4%)、「年内」(13%)を合わせて、年内いっぱいとみる回答は計77%という結果で、支持率を回復できないまま短命政権で終わる可能性をみている市場参加者が多いことが浮き彫りになった。
4月開幕の大阪・関西万博については「興味があるのでぜひ行きたい」が11%、「行ってみてもよい」が25%にとどまった。前評判としては低調といわざるをえないが、実際に開幕してからどこまで話題になり関心を集められるか、注目したい。
【ペンネーム:生豆】
調査は4月1~3日にかけて実施し、株式市場関係者118人が回答した。
QUICK月次調査は、株式・債券・外国為替の各市場参加者を対象としたアンケート調査です。1994年の株式調査の開始以来、約30年にわたって毎月調査を実施しています。ご関心のある方はこちらからお問い合わせください。>>QUICKコーポレートサイトへ