今回は、10月9日(土)に開催されたシンワオークションについてレポートする。
絵画や版画の平面作品165点、フィギュアなどの立体作品32点、スニーカーやポットなどのコラボグッズ4点、全201点がセールにかけられた。全体の出来高は、1億2896万円(落札手数料含まず・以下同)。落札予想価格上限を上回る高値で落札される作品は36点と少なかったものの、不落札となったのはわずか20点で、落札率90.05%の活気のあるセールとなった。
オリジナル作品購入より敷居は低い「アフター」
今回のセールでは、アフターと呼ばれる作品の出品が目立った。出品作品の34.8%がアフターだった。アフターは、作家本人ではなく、他人の手による制作物とされている。作家本人が監修をしている場合もあるが、作家の死後、著作権継承者の監修、許可のもとで、ギャラリーや百貨店などが制作したものなども含まれている。オリジナル作品と比べて安価となる為、作品購入の敷居は低い。人気作家の作品を気負いなく楽しみたい人には貴重な作品となる。既に評価が高い作家の高額作品だけでなく、アフターも織り交ぜた出品構成は、オークション初心者も気軽に参加でき、アート作品購入の機会が身近となるような内容だった。
最高額で落札されたのは、最終LOTの石田徹也による作品LOT.202《無題》(32.5×49.0㎝、キャンバス・アクリル)で、落札予想価格2000~4000万円のところ2500万円で落札された。2005年に31歳の若さで急逝した石田の希少価値のあるオリジナル作品に注目が注がれた。
次いで、高額落札となったのは、LOT.188バンクシーの《Get Out While You Can》(50.0×34.8cm、シルクスクリーン)で、落札予想価格700~1000万円のところ、840万円で落札された。今回のセールでは、50点にのぼるバンクシー作品の出品があった。その内、48点はアフターやアフターの複数点組みでの出品となっている。予想価格上限を上回る価格で落札された作品も多く、バンクシーの人気を色濃く印象付ける結果となった。
今回はお買い得だったジェフ・クーンズ
今回は、アメリカの現代美術家ジェフ・クーンズ(Jeff Koons、1955-)に焦点を当て、レポートする。クーンズは、キッチュ(安っぽいもの、俗悪なもの)という美意識を露骨なまでに表現した作風で知られている。2019年5月にニューヨークで開催されたオークションでは、1m大のステンレス製彫刻《ラビット》が約100億円で落札され、大きな話題となった。存命作家の最高落札額となった記録は、現在も不動のものとなっている。世界でも有名な現代芸術家のひとりと言えよう。
本セールでは、アフター3点組作品1点含む、合計4点の立体作品の出品があった。いずれの作品も落札予想価格内で落札されている。LOT.185~187はバルーンアートのうさぎ、スワン、サルを形どった999点限定の磁器による作品。磁器の表面にはミラー状の反射加工を施し、複雑な箇所も精巧に仕上げ、ステンレス鋼で制作された大型のオリジナル彫刻を忠実に再現している。
それぞれ落札予想価格100~150万円のところ、110万円で落札された。その中でも、うさぎの作品《Balloon Rabbit(Red)》(H27.4×W14.0×D18.4㎝)をピックアップし、ACF美術品パフォーマンス指標注*で動向を読み解く。落札金額平均は、2017年の186万円から始まり、2018年には200万円程度まで上昇するが2019年に165万円まで下降し、2020年からは180万円前後横ばい、落札予想価格上限平均付近を上下動しながら推移している。落札価格の中央値も、2019年の158万円を底に180万円前後で推移している。今回の落札価格110万円は、お買い得価格だったように見受けられる。
注:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、、2017~2021年10月までのオークションデータからグラフ化している。
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※Shinwa Auctionの次回開催予定は1月29日
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