今回は、10月29日(金)・30日(土)の2日間に渡って開催されたSBIアートオークションについてレポートする。落札率97.1%、落札総額16億6894万3250円(落札手数料含む・以下同)。200点近くの作品が落札予想価格上限を超える価格で落札され、盛況なセールとなった。
草間彌生の圧倒的な人気
1日目は、落札予想価格平均88~138万円程度の作品が出品された。マルチプル作品を中心に147点の出品があった。単日の落札総額は、2億5356万9250円、落札率は97.3%を記録している。最高額で落札されたのは、草間彌生のカボチャモチーフの立体作品LOT.020 《カボチャ》(27.0×27.0×25.5㎝、ブロンズ、ed.100)だった。落札予想価格650~950万円のところ、1437万5000円で落札されている。草間作品は、この日だけでも全23点の出品があったが、落札総額は1億567万3500円となっており、圧倒的な勢いをみせた。
2日目には、オリジナル作品を中心に、作品落札予想価格平均250~407万円程度の作品が230点出品された。単日の札落総額は14億1537万4000円、落札率は97.0%だった。最高額を記録したのは、1日目と同じ草間彌生による作品LOT.259《花》(45.8×38.0㎝、アクリル・キャンバス)で、落札予想価格3500~5500万円のところ、1億4950万円で落札された。2日間での最高落札額作品となっている。草間作品は、他に5点のオリジナル作品の出品があったが、いずれも高額落札となっており、落札総額は、2億9934万5000円に達した。2日間の草間だけの落札総額は、4億501万8500円となっている。国内の現代アートを牽引し、国際的にも評価が確立されている草間の人気は留まることを知らない。
NFTアートの今後に注目
また、2日目には国内のアートオークションでは初となるNFTアートのセールの開催もあり、関心を集めた。NFTは、「Non-Fungible Token:非代替性トークン」の略。データ管理にブロックチェーン技術を活用し、真証性を証明することができるようになったデジタルアートがNFTアートである。今回、NFTアートは8点の出品があったが、いずれも落札されている。今後、NFTアートがどこまで発展し、定着するものとなるのか、今後の展開が注目される。
今井俊満、予想を大きく上回る落札額
今回は、日本にアンフォルメル絵画を紹介した画家、今井俊満(いまい としみつ、1928-2002)をピックアップし、レポートする。今井は、紺綬褒章、レジオンドヌール勲章、フランス文化勲章など受章歴も多く、国際的にも評価が高い日本を代表する作家のひとりである。抽象画から具象画まで、年代に応じて大きく異なる画風の作品を発表し、晩年まで独自の世界観を表現し続けた。
今回のセールでは、2点の作品が出品されている。LOT.288 《赤い太陽》(130.3×162.0㎝、油彩・キャンバス)は、落札予想価格400~700万円のところ、1897万5000円で落札された。もう1点は、LOT.284《「マン・レイ」シリーズより「レイヨグラム黄 No;6」》(72.7×53.0㎝、エナメル・コラージュ・キャンバス)の作品で、落札予想価格15~25万円のところ、60万9500円で落札。いずれも落札予想価格上限を大きく上回る価格での落札となっている。
「マン・レイ」シリーズより「レイヨグラム黄 No;6」
出品作品のうち、今井がマン・レイをオマージュした作品シリーズである《「マン・レイ」シリーズより「レイヨグラム黄 No;6」》について、同一シリーズ、同一サイズの出品データを抽出したACF指標より、その動向を読み解く。 2016年、落札予想価格平均は40~60万円程度で設定され、落札予想価格内の48万円程度で落札されている。その後、落札予想価格平均は2018年にやや右肩下がりとなる。2019年には2016年と同等程度まで上昇し、2020年には横ばいとなっている。2021年前半に不落札が続いた為、落札予想価格平均は大きく下降しており、合わせて落札価格平均も下降している。直近の国内オークションの出品では落札予想価格20~30万円のところ、23万円での落札となっており、落札価格の振り幅が大きい。
先にも紹介した通り、今井は様々な画風の作品を手掛けている。作品シリーズによって、その価値も異なる。購入予算と照らし、お好みの作品を選出するのも楽しみのひとつかもしれない。
※2017年は、出品がなかった為2017年を除いてグラフ化している。
※2021年は12月10日までのデータを含め、グラフ化している。
(月1回配信します)
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※次回のSBIアートオークション開催予定は1月28日、29日
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