12月9日(木)に開催されたマレットジャパンの近現代美術のオークションをレポートする。今回のオークションでは、絵画作品57点、版画作品(写真含む)148点、その他、陶芸作品や樹脂などによる立体作品36点、合計241点が出品された。落札率79.3%、落札総額1億9505万円(落札手数料含まず・以下同)だった。
ホックニーが高額落札ランキング上位3位まで独占
セール冒頭では、「プリント・リバイバル(版画復興)」と呼ばれた動向(概念)をクローズアップし、1960~1990年代のアメリカの版画市場に貢献したフランク・ステラやサム・フランシスら名だたる作家の版画の名品を22点取り揃え、盛り上がりをみせた。
中でも、5点の作品が出品されたデイヴィット・ホックニーは、いずれも活発な入札が行われ、熱い視線が注がれた。本セールでの高額落札ランキング上位3位まで、ホックニーが占める結果となった。最高額で落札されたのは、ホックニーの代表的なモチーフであるプールを描いた作品LOT.014 《リトグラフの水(線、クレヨンと2種類のブルーの淡彩)》(54.5×73.0㎝、リトグラフ、ed.85)で、落札予想価格400~600万円のところ、1250万円で落札された。次点となったのは、明るい色彩と独特な視点描写によるパノラマの様なスケール感が印象的な作品LOT.012《ホテル・アカトラン、2週間後;「ムーヴィング・フォーカス」より》(73.0×188.0㎝、リトグラフ、ed.98)で、落札予想価格600~800万円のところ、1050万円で落札されている。3番目は、LOT.013《ブルー・ギター(版画集)》で、落札予想価格200~300万円のところ、760万円での落札となった。本作は、詩人ウォレス・スティーブンがピカソの絵にインスパイアされて制作した詩集にホックニーが挿絵を手掛けた詩画集で、エッチング、アクアチントなどの銅版画作品20点が収められている。1点もしくは数点セットでの出品は見かけるものの、20点全てが揃ったコンプリートセットが出品される機会は少なく、希少な出品だった。
落札価格上限を大幅に上回る落札金額で注目を集めたのは、細川真希によるヨハネス・フェルメールの《天文学者》のオマージュ作品、LOT.105《天文学者のように》(27.3×27.3㎝、キャンバス・アクリル)。落札予想価格30~40万円のところ、落札予想価格上限の約4.8倍となる195万円で落札された。細川は、近年のオークションでも熱を帯びた入札が展開される作家で、今後の動向も注目される。
落札予想価格上限平均の2.66倍
今回は、中国(北京)を拠点に活躍する中国人画家、劉野(リュウ・イエ、1964-)をレポートする。劉野は、美や感情、希望など、主に内面的な世界観をテーマにした作品を制作している。また、ピエト・モンドリアンやポール・クレーなどの西洋の抽象画をオマージュする作品も多く描いている。中国だけでなく、ヨーロッパやアメリカなどでも広く作品を展示しており、国際的に活躍する現代美術家である。
今回のセールでは、LOT.63 《Chorus of Angels》(60.0×70.0㎝、シルクスクリーン・キャンバス)1点の出品があった。天使のコーラス隊を描いた作品は落札予想価格60~80万円のところ、落札予想価格を大幅に上回る300万円で落札された。
同一作品の落札データを抽出したACF指標より、その動向を読み解く。2017年、落札予想価格平均は72~100万円程度で設定され、落札予想価格を上回る116万円程度で落札されている。その後2018年、落札予想価格平均、落札価格平均ともに若干下降をみせ、2019年には横ばいで推移となる。2020年は、2017年と同等程度の落札予想価格平均にも関わらず、落札価格平均は倍近く上昇する。2019年10月、香港のオークションで《Smoke》(178×356.5㎝、キャンバス・アクリル)という作品が高額落札(665万ドル)されたことが、上昇の後押しとなっているのかもれない。2021年には更に上昇し、落札予想価格上限平均の2.66倍となった。近年、高騰傾向にある人気作品の今後の動向を注視していきたい。
※1ドルは、115円で換算
(月1回配信します)
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※次回のマレットオークション開催予定は3月3日
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