3月30日(水)、シンワオークションの主導により、国内外の複数のオークションハウスが参画し、保税蔵置場(保税地域)を活用した保税アートオークションが開催された。保税蔵置場とは、関税法に規定する保税地域の一種で、その保税地域に指定された場所では、外国貨物の積卸し、運搬、蔵置などの行為ができるというもの。輸出入にかかかる余計な手続きや課税などが不要となる為、取引がスムーズに行われるようになる。海外コレクターには、利便性が高まる。本セールでは、9点の作品が保税対象での出品となっていた。
会場、電話、パソコン・スマートフォンから入札
今回は、デイセール(14時開始)、イブニングセール(18時開始)の2部制で行われたセールのうち、イブニングセールについてレポートする。イブニングセールでは、NFT3点、絵画51点、立体2点、合計56点の作品が出品された。出品作品数は少なかったものの、高額作品の出品が多く、落札総額は、30億7058万円、落札率は95.86%(不落札4点)と盛況なセールとなった。
セール終盤には、落札予想価格が数千万円台となる著名作家による作品・貴重な優品が連続して出品された。会場だけでなく、電話、パソコン・スマートフォンからの入札で熱い競りが展開された。最高落札額を記録したのは、オークションの最終LOTで目玉作品にもなっていたアンディ・ウォーホルのLOT.356《Silver Liz(Ferus Type)》(101.6×101.6㎝、キャンバス・シルクスクリーン)。ハリウッド映画の黄金時代を代表する女優の一人であるエリザベス・テイラーをモチーフにした作品で、落札予想価格23億~34億5千万円と高額設定の中、落札予想価格下限同額の23億円で、会場参加者によって落札された。国内オークションでも記録的な高額落札に、落札直後には会場から拍手が沸き上がった。
次点となったのは、LOT.352山口長男の《五つの線》(180.0×180.0㎝、板・油彩)。1954年「二科展」、1955年「サンパウロ・ビエンナーレ展」などに出品された作品。落札予想価格7000万~1億2000万円のところ、落札予想価格上限を上回る1億4500万円で落札された。次いで高額落札となったのは、LOT.355ポール・デルポー《灰色の都市》(138.4×156.6㎝、キャンバス・油彩)。古代建築の街と裸婦を描いた作品は、落札予想価格1億2000万~2億円のところ、落札予想価格下限同額の1億2000万円での落札となった。既に評価が高い作家の100㎝を超える大型のオリジナル作品が好結果を残した。
ウォーホル作品に上昇傾向?
今回は、アンディ・ウォーホル(1928-1987)をクローズアップする。ウォーホルは、世界的にも有名なアメリカの代表的なポップアーティスト(大量生産・大量消費の大衆文化を主題としている)である。代表的な作品には、キャンベルスープのスープ缶をモチーフにした作品があり、アートに興味がない人も一度は目にしたことがあるのではないだろうか。
ウォーホルの作品は世界の各オークションハウスで多数が取引されており、没後30年を経過しても今なお人気が高く、安定して取引されている。
本オークションでは、先の最高落札額作品の他、シルクスクリーン作品6点、合計7点の出品があった。いずれも落札予想価格下限もしくは上限を超えて落札され、ウォーホルの落札総額は、23億5085万円となっている。
LOT.325《Joseph Beuys in Memoriam》(81.3×60.6㎝、シルクスクリーン)をピックアップし、ACF美術品パフォーマンス指標注で動向を読み解く。本作は、ヨーゼフ・ボイス(ドイツの現代美術家)を追悼して制作された作品で、迷彩柄を背景に第二次世界大戦でも従軍したボイスの肖像が描かれている。落札予想価格100~200万円のところ、落札予想価格上限の3倍となる600万円での落札となった。
同一作品の落札データを遡ると、2014年に初出品されたが不落札となっており、2015年以降、1年1~2作品ペースでの出品があった。2018年は、落札予想価格150~190万円のところ、落札予想価格上限を上回る280万円で落札されている。以降、落札予想価格は多少上下動しながら、2022年には100~200万円程度となる。落札価格は2021年まで落札予想価格上限の1.2~1.5倍程度、300万円前後で推移していた。今回の上昇は、応札による異常な高騰ともみてとれるが、今後、ウォーホル作品全体的に上昇傾向がみられるかもしれない。
その後、5月9日、クリスティーズ・ニューヨークで開催されたオークションでは、ウォーホルの代表作の一つであるマリリン・モンローをモチーフにしたシルクスクリーン作品《Shot Sage Blue Marilyn》が1億9504万ドル(約253億円)で落札された。20世紀の作品では史上最高額での落札となり、話題を集めた。
POPアートの先駆けとして、後世の作家にも多大なる影響を残したウォーホル。既に高い評価を得て安定した推移をみせていた作家の再評価は、価値と安定性をより一層高めることになった。今度の動向も注視していきたい。
注:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、落札手数料を含む。
直近5年間のデータをグラフ化している。
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※Shinwa Auctionの次回開催予定は7月9日
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