【NQNニューヨーク 古江敦子】米連邦準備理事会(FRB)は6月15日、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を発表する。5月の会合で通常の2倍にあたる0.50%の利上げを決めたのに続き、今回は利上げ幅を0.75%に広げる可能性が高い。足元のインフレ加速に対応する。3カ月ごとに公表する政策金利見通し(ドットチャート)で2022年末や23年末の値がどの程度引き上げられるかも注目される。
パウエル議長は5月のFOMC後の記者会見で「委員会は0.75%の利上げは積極的に検討していない」と述べ、6月と7月の会合では0.50%ずつの利上げを示唆してきた。だが、インフレ再加速を示す物価指標が10日に相次ぎ、前提が変わった。5月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回り、ミシガン大学が消費者に聞き取り調査した長期の期待インフレ率も上振れした。
13日にはパウエル議長に近いとされるウォール・ストリート・ジャーナル紙のニック・ティミラオス記者が「6月会合で0.75%の利上げを検討する可能性がある」と報じた。報道を受け、金融機関のエコノミストからは0.75%利上げの予想が相次ぎ、市場でも一気に織り込みが進んだ。利上げ幅が0.75%になれば1994年以来となる。
FOMCは年内にあと5回開かれる。ドットチャートで7月以降の利上げペースを推し量ることになる。前回3月のドットチャートでは22年末の政策金利は委員らの予想中央値で1.875%だった。市場では今回は3%を超えるとの予想が多い。ゴールドマン・サックスは3.25~3.50%に引き上げられるとみる。6月と7月に0.75%ずつ利上げするとの見立てだ。利上げは23年前半まで続くとの見方が多く、来年以降にどの程度引き上げられるのか推測するために23~24年の政策金利の見通しも参考になる。
ドットチャートと併せて公表される経済見通しでは、FRBが指標にする個人消費支出(PCE)物価指数が焦点となる。エネルギーと食品を除くコア指数の前年比伸び率は前回3月の予想で22年末で4.1%だったが、足元のインフレ再加速を受けて4.2~4.3%程度に引き上げられるとの見方が多い。もし引き上げ幅が大きかった場合は、来年前半の利上げ加速への警戒が強まる可能性もある。
一方、急速な金融引き締めによる景気減速を反映し、米実質国内総生産(GDP)見通しは下方修正されそうだ。22年10~12月期の伸びは前回3月予想の2.8%から、今回は2%前後に引き下げられるとの予想が多い。23~24年にかけて潜在成長率にあたる長期の経済成長率(3月予想で1.8%)を下回る可能性も意識されている。もしそうなれば、ある程度の痛みを覚悟してでもインフレ抑制を目指す姿勢が示されることになる。
パウエル議長は記者会見でインフレ抑制への強い意志、労働市場の需給逼迫を踏まえ、金融引き締めに積極的なタカ派姿勢を一段と強調しそうだ。7月以降の利上げ幅について0.75%の選択肢を示唆するかどうかも注目点だ。かねて「(インフレ圧力の低下が見られない場合)我々はより積極的に動くことを検討しなければならない」と述べており、今後の0.75%利上げに含みを持たせるだろう。