【日経QUICKニュース(NQN) 田中俊行】15日の大阪取引所で債券先物が急落した。中心限月の9月物は前日比2円1銭安の145円58銭と中心限月としては2014年9月22日以来の安値を付けた。大取は相場急落を受けて取引を一時停止する「ダイナミック・サーキット・ブレーカー(即時約定可能値幅制度)」を発動した。
※15日の債券先物(中心限月)の5分足チャート
米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)の金融引き締め観測で海外金利が急騰し、国内債にも波及している。長短金利操作(YCC)を実施している日銀は予定外の国債買い入れオペ(公開市場操作)などを通じ、国内金利の上昇を抑え込んでいる。15日には先物の受渡適格銘柄のうち、最も割安な銘柄(チーペスト)である10年債356回債を対象とした指し値オペを実施すると通知。それでも日銀が現行の大規模緩和を修正するのではないかとの観測は払拭できず、債券先物にはむしろ海外勢からとみられる売りが膨らんだ。
15日の9月物の値動きは非常に荒くなった。前日比38銭安の147円21銭で始まった後、後場に一段安となった。下げ足を速めた13時50分すぎ、大取は「ダイナミック・サーキット・ブレーカー(DCB)」を発動した。DCBは誤発注などが引き起こす価格の急変動を防ぐのを狙い、直近に売買が成立した価格から一定の範囲を超える価格で注文が出された際に取引を一時中断する措置だ。DCBは15日15時半から始まった夜間取引でも発動された。
相場の過熱感を鎮める目的で実施される「サーキットブレーカー」は、DCBとは異なる措置。サーキットブレーカーは先物の中心限月が制限値幅(ストップ高やストップ安水準)を付けた場合に全限月の取引を10分間中断するというものだ。債券先物の制限値幅は2円だ。直近では量的・質的金融緩和の導入後に債券市場が混乱した2013年5月23日にサーキットブレーカーが発動した。
15日は制限値幅の下限(145円59銭)を付けたがその時間は日中取引の終了直前だった。日中取引の終了20分前以降に制限値幅に到達してもサーキットブレーカーは発動しないというルールもある。このため、15日は発動が幻となった。
9月物は15日の夜間取引でも不安定な値動きとなり、15日の清算値を87銭上回る146円45銭まで反発する場面があった。15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)やECBの緊急理事会の結果を受けた海外金利の変動や日銀の金融政策を巡る思惑によって、今後も不安定な相場展開は続きかねない。