【NQNロンドン 菊池亜矢】ロンドン株式市場でスイスの資源商社グレンコアが高値圏で推移している。6月28日の終値は460.25ペンスと2021年末を23%上回る。資源の調達から輸送、加工などで顧客の求める品質や仕様に合わせて販売するマーケティング部門が好調で、業績の上振れを期待した買いが株価を押し上げている。
同社は世界最大級の資源商社で、金属や石油などの商品取引に加え、銅や石炭などの生産を手掛ける。取引状況の最新報告で、2022年1~6月期のマーケティング部門の調整後EBIT(利払い前・税引き前利益)が前年同期比78%増の32億ドルを超えると17日に発表した。エネルギー市場の混乱で、様々な石炭の指標や品質カテゴリーの間で記録的な価格差が発生し、価格差を利用した取引が奏功したという。
長期的にマーケティング部門の調整後EBITは22億ドル~32億ドルの範囲を見込むが、22年12月期はわずか半年で見通しの上限に達したことになる。21年12月期の同部門の調整後EBITは37億ドルで会社全体の約3割を占めた。
米モルガン・スタンレーは、石炭市場の逼迫は予想以上に長期化するとの見通しを示したうえで「グレンコアは多額の現金を創出し、大幅な株主還元を実現できる可能性がある」と指摘する。グレンコアは純有利子負債を100億ドル程度を上限として資金管理し、上限を下回っていれば余剰部分を株主に還元する方針だ。21年は28億ドルを還元、22年は34億ドルの配当に加え、5億5000万ドル規模の自社株買いを22年1~6月期の決算発表までに完了する予定だ。