株式市場に戻りが出ています。本稿の最後に見るように、「景気後退→利下げ」を織り込んでの『金融緩和ラリー』のような動きです。
金利低下の分、成長株式が若干アウトパフォームしていますが、株価の回復が続けば、景気後退懸念が遠のいて金利は再び上昇し、割安株式が成長株式に対してアウトパフォームする・・・すると、インフレ懸念から米連邦準備制度理事会(FRB)は引き締めを継続・・・といった「堂々巡り」の形を筆者は見ています。合わせて、巨大テクノロジー企業の業績が『成長の壁』にぶつかっていることも直視したほうがよいでしょう。
「弱気相場が終わった」と考えるのも、「インフレ懸念が終わった」と考えるのもどちらも早計であり、引き続き、両方に備えて、幅広い分散をお勧めします。
米国は2四半期連続のマイナス成長:在庫取り崩しの影響と、堅調なサービス消費
さて、米国では4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率換算でマイナス0.9%となり、1-3月期(同マイナス1.6%)と合わせて、2四半期連続のマイナス成長となりました。
2四半期連続のマイナス成長は「テクニカル・リセッション」と言われますが、(次項で述べるように)「在庫取り崩し」の影響が大きいほか、GDPの最大項目である「サービス消費」は過去と比べても大変堅調です。
また、「雇用統計」として知られる非農業部門の雇用者数は、1-6月に「274万人」増加しており、通常「雇用が増えているときは、景気後退とは判定されません」。
(説明)在庫は、昨年後半の成長率を7.5%ポイント分押し上げ
以下、在庫について考えると、4-6月期のGDP成長率(マイナス0.9%)は、在庫の取り崩しによって「2.0%ポイント分」押し下げられており、これを除くと(GDP成長率は)プラスです。
もともと在庫は、昨年の7-9月期および10-12月期に大幅に積み上げられており、GDP成長率を、2四半期合わせて「7.5%ポイント分」押し上げていました。言い換えると、昨年後半のGDP成長率が高くなっていたわけです。
企業は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ずいぶん前から(①ふたたび経済活動が止まっても事業を続けられるように、また、②仕入れ価格が高騰する前に)在庫の確保に急いでいましたが、昨年後半にこれがようやく満たされていました。実際には(日本でもそうですが)経済活動は続いており、今回は、これを取り崩す「在庫調整」が出た模様です。
企業による「在庫の積み上げラッシュ」が、生産者物価、そして消費者物価の上昇につながっている側面が多分にあると見られます。GDPのもうひとつの大項目である「財の消費」は(おそらくは物価上昇の影響によって)食料品やガソリンなど、生活必需品の購入「量」が減っていると見られ、こうした状況は、政策当局者に、さらなる利上げの必要性を認知させるかもしれません。
2022年7月レビュー
2022年7月は、利下げ織り込みが強まって金利が低下し(実質金利も)、株価に戻りが出ました。『金融緩和ラリー』といった形ですが、「ベア・マーケット・ラリーに注意が必要」でしょう。
中銀の動きとしては、イスラエル、豪州、マレーシア、ハンガリー、ポーランド、ペルー、ニュージーランド、カナダ、チリ、韓国、フィリピン、ユーロ圏(→南欧債向けのTPIも導入)、デンマーク、南アフリカ、ハンガリー、米国、アルゼンチンなどが利上げを実施しました。他方で、ロシアとウズベキスタンが利下げを実施しました。
その他の出来事としては、
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- ロシアがウクライナ東部のルガンスク州を制圧
- 米国で独立記念日に複数の銃乱射事件
- スリランカが「破産」を宣言
- 欧州議会が巨大IT企業を包括規制する「デジタルサービス法案」と「デジタル市場法案」を可決
- ドイツ政府が、自国エネルギー大手ユニパーを救済
- フランス政府が、電力公社(EDF)を完全国有化
- 英国のジョンソン首相が辞任表明
- イーロン・マスク氏がツイッターの買収取り止めを表明。ツイッターは契約解除を無効として提訴
- 安倍晋三元首相が銃撃され、死去
- 自由民主党が第26回参議院議員選挙で大勝
- 中国政府が、複数の銀行の預金払い戻しを肩代わり
- 台湾の半導体メーカー主要5社の6月売上高が急速に鈍化。
- 米国の6月CPI総合前年比+9.1%・コア+5.9%、PCEデフレーターが総合+6.8%・コア+4.8%
- ユーロが対米ドルでパリティ割れ、約20年ぶり
- イタリアのドラギ総裁が辞任を表明
- 米国のバイデン大統領がサウジアラビアを訪問し、原油増産を要請
- ロシアからドイツへの天然ガス・パイプライン「ノルドストリーム」が一時完全停止
- ロシアとウクライナが、トルコと穀物輸出に向けた合意文書に署名。→8/1に第1便が出航
- 世界保健機関(WHO)が、ウイルス感染症「サル痘」について、緊急事態宣言を発出
- 国際通貨基金(IMF)が、2022年の世界経済の実質GDP成長率を3.2%に下方修正
- 米国の上下両院が、半導体の生産や研究開発に補助金を投じる法案を可決。バイデン大統領が署名の見込み。
- 米中首脳が電話会談。台湾問題が主題。
- 米国が2四半期連続で実質マイナス成長
- 米大手テクノロジー企業の4-6月期業績が概して鈍化
などが挙げられます。
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