【NQNロンドン 菊池亜矢】独シーメンス株が持ち直している。8月16日終値は112.04ユーロと、7月に付けた年初来安値を2割上回る。8月初旬に発表した2022年4~6月期決算は最終赤字となったが、売上高は前年同期から増えた。インフレや供給網の混乱といった逆風下での増収が好感された。デジタル化や自動化など中長期的な成長が見込める分野への期待が株価を支えている。
22年4~6月期の最終損益は16億5500万ユーロの赤字(前年同期は13億5200万ユーロの黒字)に転落した。傘下の重電大手シーメンス・エナジーの評価損27億ユーロを計上したほか、ロシア事業からの撤退費用として5億5800万ユーロを計上したのが響いた。
一方、売上高は比較可能なベースで前年同期比4%増の178億6700万ユーロだった。QUICK・ファクトセットが集計した市場予想(173億4500万ユーロ)を上回った。けん引したのはデジタルインダストリーズ(DI)部門だ。工場の自動化やデジタル化を促すサービスや製品を手掛け、シーメンスの柱といえる部門だ。4~6月期の同部門の売上高は49億3000万ユーロと12%増えた。競合する仏シュナイダーエレクトリックの産業オートメーション部門の売上高が4~6月期に6%増、スイスABBのモーション部門が3%増だったのと比べても伸びが目立つ。
デジタル技術を活用し、ビルやインフラ設備のエネルギー効率向上を目指す「スマートインフラストラクチャー」部門の売上高も10%増えた。同部門は売上高全体の2割強を占める。シーメンスは6月にクラウドベースのビル管理ソフト大手の米ブライトリー・ソフトウエアの買収を発表しており、スマートインフラ部門の事業強化に意欲的だ。
ローランド・ブッシュ最高経営責任者(CEO)は11日、ブルームバーグテレビのインタビューで「3~4四半期の間、市場からの強い需要を見込んでいる」と述べた。21年10月~22年6月期の3四半期の受注額は671億9300万ユーロと前年同期比20%増え、受注残高は990億ユーロと高水準にある。デジタルビジネスへと着実な転換を図っている同社への成長期待は高い。