【NQNロンドン 菊池亜矢】英国の日用消費財メーカーのレキットベンキーザーグループ株が軟調だ。9月14日終値は6454ペンスと8月に付けた年初来高値(6824ペンス)を5%強下回る。9月末でラクスマン・ナラシムハン最高経営責任者(CEO)が退任し、ニカンドロ・デュランテ筆頭独立社外取締役が新CEOに就任する。ナラシムハン氏の経営手腕を評価する見方が多いだけに、交代後の成長が不安視されている。
2019年9月にCEOに就任したナラシムハン氏は生産性向上を進めると同時に、eコマースなどの成長分野や市場をリードするブランドに投資を集中してきた。21年には業績の重荷だった中国粉ミルク事業を現地のファンドに売却。スキンケアやフットケアなど成長に陰りがみえる事業も売却し、事業ポートフォリオの見直しを進めた。
7月下旬に発表した22年1~6月期の売上高は比較可能なベースで前年同期比9%増の68億8800万ポンド、調整後営業利益は24%増の17億6500万ポンドだった。売上高の35%を占めるヘルス部門が市場シェアを拡大し、売り上げを伸ばした。栄養関連部門も中南米や東南アジア、米国での売り上げが好調だった。
売上高営業利益率は1~6月期に25.6%と前年同期から2.9ポイント上昇した。商品構成の最適化や価格設定の見直し、投資の段階的実施が奏功した。同期間でみた営業利益率は同業の英ユニリーバ(17.0%)やスイスのネスレ(16.9%)を上回る。
新CEOに指名されたデュランテ氏は11年から19年まで英たばこ大手ブリティッシュ・アメリカン・タバコのCEOを務めた。13年にレキットベンキーザーの非常勤取締役となり、同社の戦略への理解は深いと市場ではみられている。もっとも、会社はCEO交代の発表と同時に「長期的に最適な候補者を特定するためのプロセスを開始した」とコメントしており、デュランテ氏は暫定的なCEOとなる可能性が高い。
業績は好調とはいえ、新型コロナウイルス禍で消毒剤の売り上げが増えた恩恵を受けていた面もある。コロナ危機の後退に伴い、消毒や除菌関連製品を扱う衛生部門の1~6月期の売上高は比較可能ベースで前年同期比6%減った。暫定的ではない新たなCEOの下で将来計画を明確に示すまで、積極的な買いは入りにくそうだ。