【日経QUICKニュース(NQN) 北原佑樹】日本取引所グループ(JPX、8697)は秋分の日の23日、先物などデリバティブ(金融派生商品)の祝日取引を始める。傘下の大阪取引所が株価指数や商品の先物・オプションを扱うほか、東京商品取引所(TOCOM)の原油先物も対象となる。日本の先物市場は取引日の多さや取引時間の長さでは、米シカゴをはじめとする海外市場に劣る。個人など幅広い投資家に取引機会を提供し巻き返しを図る。
■取引機会の公平さを確保
祝日取引を実施する日は取引所が指定する。祝日取引は平日とほぼ同じ制度で取引できるが、一部で異なる。祝日の前営業日の夜間取引の延長として扱い、祝日を挟み祝日の翌営業日の日中取引までをひとつの取引日とする。祝日中に基準値段や清算値は更新しない。日経平均先物の祝日の取引時間は日中取引が8時45分~15時15分、夜間取引が16時30分~翌日6時だ。国債証券先物・オプションと個別株式のオプションは祝日取引の対象外となる。
国内での祝日取引は、個人投資家と機関投資家の取引機会の公平さを確保する意義がある。日本は海外に比べ祝日の数が多く、休場日が多い。大口の機関投資家は米シカゴ市場やシンガポール市場で先物を取引できるが、個人が取引するのは難しい。国内の取引所で祝日取引が始まれば、海外時間で相場を動かす材料が出た際に、個人がリアルタイムで売買しやすくなる。
■コモディティにも資金流入期待
令和への改元があった2019年4~5月に10日連続の休場となり、大取で祝日取引の議論が加速した。株式市場では「東京金融取引所の証拠金取引『くりっく株365』のようなCFD(差金決済取引)を使ってヘッジしている個人が先物で取引できるようになる」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)と、ネット証券を中心に前向きな声が多い。
取引主体の多様化も期待できそうだ。楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリストは「国内商品先物に海外勢の資金流入が進むきっかけになる」と話す。祝日の一部で短縮取引がある米シカゴのような世界の主要市場と取引条件で近づくことができれば、投資家を呼び込みやすい。JPXは祝日取引の開始で投資家の利便性を高め、国際競争力を向上させる考えだ。
流動性の確保は課題だ。祝日取引は各証券会社や商品先物取引業者などの取引参加者が参加するかどうかを決め、取引所に届け出る。大取とTOCOMが実施した意見公募では、祝日は平日と比べて参加者が少なく、流動性が低い場合に起こりうるマーケットの急変動への懸念も寄せられた。参加各社にとっては、祝日取引に対応したシステムの改修などコスト負担も無視できない。投資家を呼び込むには、まず祝日取引に参加する業者を増やす取り組みが欠かせないだろう。