2022年6月に江東区から千代田区半蔵門へオフィスを移転したマレットジャパンの移転後初となるオークションが9月8日(木)に開催された。国内作家82名、海外作家61名による近現代美術の作品が244点出品された。洋画、日本画などの絵画作品の他、立体、陶芸、写真など作品種も豊富に揃ったセールだった。会場だけでなく、オンラインからのビッドも活発に展開され、落札総額は2億3602万円(落札手数料含まず・以下同)、落札率は76.23%を記録した。
今津景、予想の7倍で落札
勢いのある競りで注目を集めたのは、3点のオリジナル作品の出品があった今津景。今津は、作品のコンセプトに基づいて収集した画像データをコンピューターに落とし込み、それらを画像編集ソフトで画面構成し、独自の仮想空間を構築。その仮想空間を元に、キャンバスに油彩で描きあげるという独自のスタイルで作品を手掛けている。最近のオークションで値動きが目立つ作家のひとりである。LOT.237《Green Relax》(72.5×90.6㎝、キャンバス・油彩)は、落札予想価格30~40万円のところ、280万円で落札され、落札予想価格上限の7倍と大幅な伸びをみせた。続く2点も順当に落札され、LOT.238《作品》(145.0×97.0㎝、キャンバス・油彩)は400万円、LOT.239《Broadcaster》(130.3×162.1cm、キャンバス・油彩)は、410万円での落札を記録し、いずれも落札予想価格上限の約3~4倍という大きな競り上がりを見せた。次世代を担う注目の若手作家の今後の活躍に期待が高まる。
トップロットを飾ったのは、最終LOTで出品されたロッカクアヤコの作品。LOT.245《Untitled》(105.5×100.0㎝、キャンバス・アクリル)は、落札予想価格2500~3500万円のところ、上限を大きく上回る4800万円で落札された。ロッカクは、他にセラミックの立体作品やラグなど、全4点が出品されている。トップロットを記録した作品以外は、落札予想価格内に留まった。ロッカクの出品だけで落札総額は6450万円を記録し、今回の全落札総額の27.3%を占める結果となった。ロッカクの堅調は続く。以降の高額落札には、カシニョール、草間彌生、ユトリロ、今井麗が名を連ね、600~800万円台での落札となっている。今回のセールでは、フランス人作家の優品が多く出品され、好結果を残している。
AUTO MOAI、常に落札予想額を超える高い支持
今回は、匿名をテーマに日本で活躍するアーティスト AUTO MOAI(おーともあい、1990年~)に焦点を当てる。AUTO MOAIは、デザイン系の専門学校でグラフィックなどを学び、2015年より作品制作を開始。現在に至るまで、ミュージシャンのCDジャケットや人気アパレルブランドへのアートワーク提供、イベントフライヤーも多数手掛けており、イラストレーターとしても認知度が高い。2021年には、香港や韓国でも個展を開催し、国際的にも活躍の場を広げている。
“消費される匿名の20代の女性”をメインモチーフにしたAUTO MOAIの作品には、表情を持たない人物が多く存在する。社会における個人の希薄さをテーマに、他人と自分、夢と現実など全ての境界線を取り払ったフラットな世界を表現するため、人物には表情を描かないという。
本セールには2点が出品された。1点は、表情を持たない女性の全身像をモノクロで描いた版画作品のLOT.084《作品》(9.3-13.2×3.7-13.3㎝、シルクスクリーン、5点セット)で、落札予想価格10~15万円のところ、21万円で落札された。もう1点のLOT.241《ルビールーム》(72.5×60.5cm、キャンバス・油彩)は近年手掛けるようになった油彩作品で落札予想価格70~100万円で出品されたが、不落札に終わった。
過去数回の出品があったLOT.084《作品》をピックアップし、ACF指標より動向を読み解く。2021年2月の初出品から今回まで、落札予想価格は変わらず10~15万円で出品されている。初出品時の落札価格は30万円で、予想価格上限の2倍を記録した。2021年4月、9月と右肩下がりで16万円まで下降するが、1年後となる今回のセールで21万円まで上昇し、調子を戻している。下降はみられたものの、常に落札予想価格上限を超えて推移しているのは高い支持を得ているからであろう。AUTO MOAIの象徴的な作品に人気が集まっている。今後、更なる上昇を見せるのか動向を注視していきたい。
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※次回のマレットオークション開催予定は12月1日
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