【NQNロンドン 菊池亜矢】英保険関連株の一角が年初来安値圏となっている。英運用会社リーガル・アンド・ジェネラル・グループ株の10月12日終値は204.10ペンスと、9月初めから19%下落した。英保険のプルーデンシャルは5%安、、も11%下げている。いずれも年金関連事業を手掛けており、英国債市場の混乱が業績を圧迫するとの警戒が株価の重荷になっている。
※リーガル・アンド・ジェネラル・グループ、プルーデンシャル、アビバの株価相対チャート。(9月初めを100として指数化)
英トラス政権の大規模減税計画をきっかけに、財政や国債需給の悪化が意識され、9月下旬に英国債金利が急騰(価格が急落)した。国債を担保にレバレッジをかける「ライアビリティー・ドリブン・インベストメント(LDI=債務主導投資)」という運用戦略を用いる英年金基金は、金利急騰でポジション管理が難しくなり国債の売却を迫られた。相場下落で担保の追加差し入れのための換金売りも出て、国債価格がさらに下落するなど混乱が広がっていた。
こうした危機に対応するため、9月28日に英イングランド銀行(中央銀行)は緊急の一時国債買い入れ策を発表。今週に入ってから国債購入の上限額引き上げや、購入対象を物価連動国債に拡大するなど、市場安定策を相次ぎ打ち出した。
株式市場では、年金運用を手掛けるリーガル・アンド・ジェネラルが投資家の標的となった。同社は4日、「当社の年金ポートフォリオは担保請求に応じることが困難な状況にはなく、国債や債券を強制的に売却させられたこともない」との声明を発表した。「上半期(2022年1~6月期)にみられた好調な勢いが続き、下半期も好調を維持している」として、22年12月期通期の営業利益は前期比8%増になるとの見通しに変更はないと強調した。
格付け会社フィッチ・レーティングスは「保険会社の株価の動きは投資家の懸念を示しているが、保険会社の流動性は最近の英国債市場のボラティリティー(変動率)に十分耐えうる」と指摘する。規制当局による相当な資本要件に従う必要があるほか、様々なシナリオでストレステストが行われており、十分な流動性バッファー(緩衝)を備えているとの見解を示した。
もっとも、英中銀は当初の予定通り国債購入を14日に終了すると繰り返す。ベイリー英中銀総裁は11日、関係する年金基金などのファンドやファンドを管理する企業に対し、リバランス(資産配分の見直し)を急ぐよう求めており、市場の不信感は消えていない。
LDIファンドはデリバティブ取引を多用していたとされ、損失拡大が意識されやすいことも市場の不安を誘っている。英国の20年や30年の超長期債利回りは12日、9月28日以来初めて5%を上回ってきた。英国債市場の混乱が再び警戒されるなか、投資家は英保険関連株の持ち高を落とす状況が続きそうだ。