【日経QUICKニュース(NQN) 長谷部博史】外国為替市場で円安・ドル高に歯止めがかからず、円相場は1ドル=148円台と32年ぶりの安値圏での推移が続く。外国為替証拠金(FX)取引を手掛ける個人投資家「ミセスワタナベ」にとって現在のドルの水準は「高根の花」。身動きをとりづらい今のうちに持ち高を整理して身軽になっておき、日本政府・日銀による再度の円買い介入で相場が円高・ドル安に振れたらすかさず円売り・ドル買いに動こうと、構えている様子が透ける。
■個人には「行き過ぎ」に見える
前週発表の米物価指標が市場予想を上回ったことなどを受け、14日のニューヨーク市場で円相場は一時148円86銭近辺と1990年8月以来32年ぶりの円安を付けた。米連邦準備理事会(FRB)による利上げが長期化するとの見方から円売り・ドル買いの圧力は強い。17日の東京市場でも円相場は148円台後半を中心にじりじりと水準を切り下げる場面が目立った。
個人投資家には、現在の円安・ドル高水準は行き過ぎとの見方が多いようだ。QUICKが17日算出した14日時点のFX5社合計(週間)の建玉状況によると、円に対するドルの買い比率は45.2%と前の週から5.8ポイント低下。ドルの買い比率が50%を下回るのは、FRBによる利上げ開始で円安・ドル高が進み始めた3月以来だ。
「10月に入って以降、押し目がない」。外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏は、個人投資家は今はドルが高すぎるとして、ドル買いを手控えているようだと解説する。
■介入なら円売り・ドル買い入れてくる
マネーパートナーズの武市佳史氏は直近で、個人投資家のドル買いの建玉が減った以上に、ドル売りの建玉が増えた点に着目する。「為替介入への期待感からドルを売り、円高・ドル安局面でドルを買い戻そうと構えている人が多いのだろう」と分析する。
いずれにせよ「円高・ドル安局面が来たら円売り・ドル買いをしたいという個人投資家は依然、多い」(外為どっとコム総研の神田氏)。「仮に、為替介入で円相場が145円よりも円高方向に振れれば、かなりの個人投資家は円売り・ドル買いを入れてくるのではないか」と神田氏はみる。
QUICKと日経ヴェリタスが外為市場関係者を対象に共同で実施した10月の外為月次調査によると、注目する円相場の変動要因として「当局の姿勢(介入含む)」との回答が44%と2012年2月調査以来の多さとなった。
17日は早朝に神田真人財務官が「過度な変動に対してはしっかりと対応していくことになる」と述べたことなどを受け、円は148円40銭近辺まで下げ渋る場面もあった。個人投資家は要人発言をにらみつつ、ドル買いの好機を虎視眈々(たんたん)と待ち続けているようだ。