【NQNロンドン 菊池亜矢】スウェーデンの通信機器大手エリクソン株が下落している。株価は10月24日に一時58.81スウェーデンクローナまで下落し、2018年4月以来約4年半ぶりの安値を付けた。24日終値は61.16スウェーデンクローナと4日続落した。コスト増加が利益を圧迫するとの懸念が重荷となっている。
同社が20日発表した22年7~9月期決算は、売上高が前年同期比21%増の680億スウェーデンクローナと、QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(663億スウェーデンクローナ)を上回った。北米のネットワーク事業が好調だった。一方、営業利益に近いEBITA(利払い・税引き・一部償却前利益)は18%減の76億スウェーデンクローナと、市場予想(89億スウェーデンクローナ)を下回った。
売上高は2ケタ増となったものの、既存の経営資源を活用した「オーガニック成長率」では3%程度。主要通貨の中でドル高の勢いが増す中、スウェーデンクローナは1年前の1ドル=8スウェーデンクローナ台後半から、足元で11スウェーデンクローナ台前半と約3割下落した。地域別でみた売上高に占める米国の比率は3割強と最も高く、自国通貨安が売上高を押し上げた面が大きい。
売上原価は前年同期から27%増え、販管費は53%増えるなど、コストが膨らんでおり、売上高利益率(EBITAベース)は前年同期の16.5%から11.2%に低下した。同社のエクホルム最高経営責任者(CEO)は「24年までにEBITA利益率を15~18%にする目標を掲げており、目標達成を確実にするためコスト削減を進めていく」と強調するが、歴史的な高インフレのもとで利益率が見込み通りに改善するかは不透明だ。コスト削減の効果がはっきり出てくるまで、投資家の慎重な姿勢が続きそうだ。