3月期決算企業の4~9月期決算発表が続いている。一部には経営陣が記者会見に応じる企業もある。日経QUICKニュースが配信した記者会見の経営コメントを以下にまとめた。
◇三菱地所常務、1000億円の自社株買い「株価の安さ意識」
三菱地所(8802)の梅田直樹執行役常務は10日の決算会見で、同日決めた最大1000億円の自社株買いについて「株価が理想(の水準)よりディスカウントされている点を意識した」と説明した。同社のNAV(ネット・アセット・バリュー=時価純資産)に比べると現状の株価水準は割安との見解を示した。そのほか財務の健全性など総合的に考えて自社株買いを決めたとした。
◇東エレク執行役員「23年、メモリー向け設備投資は調整期」
東京エレクトロン(8035)の川本弘執行役員ファイナンスユニットジェネラルマネージャーは10日、足元の事業環境に関し「かなり不安定な状況」との認識を示した。「2023年はロジック半導体向けは引き続き強いが、半導体メモリー向けの設備投資は調整期になる」と話した。22年4~9月期の決算説明会で説明した。
メモリー向け設備投資は「23年後半から調整が一巡し、まずDRAM、その後NANDが回復に向かう」と予想。24年は「半導体需要の回復に備え(半導体メーカーが)準備を進めると思われ、非常にいい年になるのではないか」との考えを示した。
米国を中心とする対中国輸出規制の拡大に関しては「中国の顧客の投資計画が見直され(東エレクに)多少の影響が出る可能性は否めない」とした。一方、「特に米国の製造装置メーカーは難しい状況だが、その穴埋めを狙うような受注活動はしない」とも述べた。
◇マツダ取締役、半導体不足「まだ予断許さない」
マツダ(7261)の毛籠勝弘取締役専務執行役員は10日に開いた決算説明会で、足元で継続している半導体不足について「これまで打てる施策をずいぶんと講じたことで、以前よりも安定して調達できるようになってきた。月間10万台以上の生産が可能になっている」と話した。一方で新たな半導体部品が不足する事態も生じているとし、「造れば売れるという環境だが、半導体不足についてはまだ予断を許さない状況は続く」との見方を示した。
◇マツダ取締役、ロシア「生産撤退、サービスは継続模索」
マツダ(7261)の毛籠勝弘取締役専務執行役員は10日に開いた決算説明会で、ロシア事業について「生産事業についてはロシアからの撤退を進める方針で、これから具体的な手続きを進めていく」と述べた。一方で「サービスについては継続することを模索している」と語った。
マツダは以前からロシア現地車メーカーのソラーズとの合弁企業によるマツダ車の生産を終了する方向で協議している。10月24日付でソラーズに出資持ち分の全額を譲渡する契約を締結した。
◇資生堂CFO、原材料高「欧米は値上げで影響を一部相殺」
資生堂(4911)の横田貴之最高財務責任者(CFO)は10日、オンラインで開いた2022年1~9月期の決算説明会でインフレや原材料高への対応について「欧州事業や米国事業、(空港や免税店などで化粧品を販売する)トラベルリテール事業では値上げをして影響を一部相殺している」と語った。「インフレだけではなく、各ブランドごとの立ち位置をみながら今後も必要な値上げを検討していく」との認識を示した。
中国に関しては「同国ではゼロコロナ政策が続いているが、来年の春ごろには中国からの訪日客が戻ってくるとありがたい」と述べた。
◇資生堂の魚谷社長、藤原常務「リーダーとして厳しい決断できる」
資生堂の魚谷雅彦社長は10日に開いた新経営体制の説明会で、2023年1月1日付で社長に就任する藤原憲太郎常務について「リーダーとして厳しい決断ができる」と述べた。会長になる魚谷氏の役割に関しては「分担というよりは、新規の事業開発やM&A(合併・買収)については、時間をできる限り割き、一緒に相談しながら実行していきたい」とも語った。
藤原常務は日本事業について「単純に構造改革をするというよりは、成長のトップラインをどう上げるかにこだわっていきたい」と述べた。事業を展開する中国の景気動向については「回復は期待するほど簡単ではない。来年の上期ぐらいまでは少し時間がかかる」と述べた。ただし、中間所得層が大きく伸びるなか「大変魅力的な市場」とも話した。
◇ENEOS社長、需要「コロナ禍前水準に戻ってきている」
ENEOSホールディングス(5020)の斉藤猛社長は10日の決算会見で、ガソリンや軽油の需要について「コロナ禍前の2019年の水準に戻ってきている」と説明した。
ガソリンなどの高騰に対する政府の激変緩和措置に関しては「(需要喚起に)効果がある」と語った。激変緩和措置の出口戦略について「(急速に)価格差が発生するとガソリンスタンドなどで混乱が生じるため、段階的な補助縮小をお願いしたい」と述べた。政府は石油元売りへのガソリン補助金の上限を23年1月以降、徐々に縮小する考えだ。
◇ENEOSの斉藤社長、前会長辞任「ガバナンス強化に取り組む」
ENEOSホールディングス(5020)の斉藤猛社長は10日の決算会見で、会長グループ最高経営責任者(CEO)を退任した杉森務氏について「当社は高い倫理観を持って業務にあたってきたが、前会長自らが(それに)背く行為で私自身も強い憤りを感じている」と述べた。そのうえで「ガバナンスの一層の強化に取り組んでいく」と説明した。杉森氏は女性への不適切な言動で8月に退任した。
杉森氏退任の経緯も説明した。「7月上旬に被害の報告を受け、第三者の調査機関を入れて(杉森)会長の不適切な行為が判明した。私自ら会長に辞任を求めて、即時の辞任に至った」と述べた。一連の問題で付随して発生した費用の負担を前会長に求め、役員報酬の一部を不支給とするなど厳正に対応していくとした。
◇日清食HDの矢野CFO、値上げ影響「低価格品へのシフト少ない」
日清食品ホールディングス(2897)の矢野崇最高財務責任者(CFO)は10日の決算説明会で、即席麺値上げによる消費者動向について「当初は低価格商品へのシフトがみられたが、以前に価格改定をしたときよりは少なかった」と話した。同社は6月、3年ぶりに主力の「カップヌードル」など即席麺を値上げしていた。
10月期以降の業績動向については「世界景気の減速が意識されるなか、相対的に値ごろ感のある即席麺に対する需要は今後も拡大が見込まれる」との見方を示した。