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注目のIPO、完全栄養食のベースフードが上場 「完全な競合商品はない」

記事公開日 2022/11/15 10:34 最終更新日 2022/11/16 07:43 国内株式市場サマリー 日本株 新規株式公開 IPO 注目銘柄 IPOワールド NQNセレクト

【日経QUICKニュース(NQN) 大沢一将】 「完全栄養食」のベースフード(2936)が15日、東証グロース市場に上場した。たんぱく質やビタミンなどの栄養素がとれるパンやクッキー、パスタを販売しており、都内のコンビニなどでも見かけるようになった。上場時の時価総額は約407億円(公開価格は800円)と大きく、今月の新規株式公開(IPO)の注目銘柄だ。山本陽介最高財務責任者(CFO)に今後の展望などを聞いた。



■「栄養のある食事を手軽に」

――完全栄養食への関心が高まっています。2021年3月には関東のコンビニで完全栄養のパン『ベースブレッド』の販売を始め、SNS(交流サイト)でも話題です。

「ホームページから商品を定期購入する会員数は2021年2月末で約3万8000人だったが、22年8月末に約13万7000人まで増えた。主力はベースブレッドで、2022年2月期の販売数は前期比4倍の約2800万袋だった。22年3~8月期は約2400万袋と伸びている」

「マーケティング上、なにか特別なきっかけがあったわけではない。商品の種類の増加や味の改善によって徐々に顧客が増えているとみている」

――顧客にはどのような人が多いですか。

「商品は幅広い層に受け入れられているが、特にこれまで低糖質のパンやグラノーラ、サラダチキンなどを選んでいたような健康意識の高い人たちから目を向けられている」

「顧客には男女差や属性(職業など)の偏りはみられない。年代は30代~40代がやや多いが、日々忙しく時間がないなか『栄養のある食事を手軽にとりたい』というのは、だれにでも共通の課題だと思っている」

■ターゲットは「主食」市場

――業界の動向や、市場の先行きをどうみていますか。

「日清食品ホールディングス(2897)の『完全メシ』などキーワードの重なる商品があることは認識しているが、現時点で完全に競合となる商品はほぼない印象だ。完全栄養食の市場はまだ生まれたばかり。(今後の拡大を見据えると)競合が問題になる時期ではない」

「栄養食というくくりではなく、主食市場全体が我々のターゲットだ。そういう意味では競合は多い。『おいしい』と思ってもらえれば、継続して購入してもらえる。味の改善を突き詰めているのが、ベースフードの最大の特徴といえる」

――小麦など原材料高の影響はどうでしょう。

「原材料のなかでは小麦の値上がりが比較的大きいが、様々な材料を使っており、小麦の値上がりがダイレクトに原価に跳ね返るわけではない。製造や配送の効率化、商品数の拡充など収益力改善の余地は多く、原料高の影響はそれらでおおむね吸収できる」

――黒字化のめどについてどう考えますか。22年2月期(前期)は広告宣伝費や商品の開発・改善にかかる費用が大きく営業赤字でした。

「味の改善を続ければリーチできる顧客が増え、売上高も伸びる。今期は研究開発の人員を増やしたので固定費が増えた。ただ、売り上げに連動して増えるわけではなく、来期以降は売り上げに対する費用の比率は落ち着いてくる。実店舗での展開による認知度の向上などで広告費も抑えられる可能性がある」

■23年以降、中国進出を目指す

――海外展開について。23年以降の中国進出を目指し、香港でテスト販売しています。どのような状況ですか。

「期待を超える売れ行きで、手ごたえを感じている。一購入あたりの袋数が日本の2倍以上あり、広告予算をあまり投じていないが、毎月着実に購入数が伸びている」

「要因は2つあると分析している。1つは味。香港のパンは甘く、歯応えのないものが多いが、ベースブレッドは甘すぎず、しっかりとした食べ応えがあるため、健康志向の顧客に受け入れられている」

「中国では『爆買い』のように日本製品を大量購入する習慣がある。送料が無料になる32袋の購入を初回から選択する顧客が多く、平均購入数が日本に比べて多い」

【市場の目】
 ベースフードの公開価格は800円、想定発行価格の950円より安く決まった。松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「一般論としては上場後も人気化しづらい。公開規模の大きさも気がかりだ」と話す。営業赤字である点をネガティブ視する声もある。目先の株価は上がりにくいかもしれないが、長い目で見れば、おいしさがより多くの人に受け入れられるかがポイントだろう。

【ベースフードの上場に関するデータ】
・公開価格      800円
・公募株式数     272万3100株
・売り出し株式数   368万4200株(オーバーアロットメントによる売り出し96万1000株)
・公開価格に基づく時価総額   約407億円
・資金吸収額   約59億円
・発行済み株式数に占める売り出し株数の比率  約14%
・株主構成       橋本舜社長、ベンチャーキャピタルなど
・ロックアップ対象  上記大株主
・ロックアップ期間  上場後180日目(2023年5月13日)まで
・直近の業績
 2022年3~8月期(今上期)   2022年2月期(前期実績)
売上高    45億円        売上高    55億円
売上原価   19億円        売上原価   22億円
販管費    29億円        販管費    37億円
営業損失   3億7828万円     営業損失   4億5421万円
純損失    3億8203万円     純損失    4億6307万円

 

著者名

日経QUICKニュース(NQN) 大沢 一将


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