11月12日(土)にシンワオークションのセールが開催された。本セールでは、マンガ(47点)、近代美術(64点)、近代美術PartⅡ(206点)、コンテンポラリーアート(30点)の4ジャンルより、絵画・書・工芸などの良品が合計347点出品され、うち322点の作品が落札された。落札総額は12億1480万円(落札手数料含まず・以下同)、落札率92.8%の好結果となった。
予想価格の230倍で落札
大きな競り上がりをみせた作品が際立ったのは、中川一政のコレクション76点を含む近代美術PartⅡのセールだった。LOT.71伊東深水の優れた描写力による美人画(3点組・新版画)は、落札予想価格2~5万円のところ、落札予想価格上限に対し230倍の1150万円で落札された。また、風景版画に定評がある川瀬巴水の作品も勢いある結果を残している。関東大震災後の東京風景を描いた20枚のシリーズのうちの1枚であるLOT.116《芝増上寺》(38.3×26.0㎝、新版画)は、落札予想価格2~5万円に対し落札予想価格上限の31倍の155万円で落札され、新版画の好調が印象に残るセールとなった。
コンテンポラリーアートは、大型作品や既に国内外で高い評価を得ている作家の作品を揃え、落札総額を4億9123万円まで伸ばしている。落札予想価格を大幅に上回る作品は少なかったものの、27点の作品が順当に落札された。セール終盤には、高額落札が続き、注目を集めた。本セールでトップロットを飾った作品は、抽象画の先駆者として知られる山口長男の大作LOT351《圧》(182.5×182.3㎝、油彩・板)。落札予想価格7000万~1億4000万円のところ、落札予想価格内の1億3500万円で落札されている。
10年で9倍以上の伸び
今回は、世界的なアーティストのひとり草間彌生(くさま・やよい、1929‐)にスポットを当てる。草間は、絵画や彫刻、インスタレーション、パフォーマンスアートだけでなく、詩や文学、ファッションなど様々な分野において独創的な世界観で輝かしい功績を残している。2016年には、その功績が高く評価され、文化勲章を受章している。水玉模様や網模様などを絵画や立体に反復・増殖させて描く作品で知られ、中でも、カボチャをモチーフにした作品は格別の人気を博している。
本セールでは、オリジナル作品3点、マルチプル作品6点、全9点の作品が出品された。全ての作品が落札され、その落札総額は、1億5070万円を記録した。最高落札となったのは、LOT350《かぼちゃ》(24.5×33.3㎝、アクリル・キャンバス)で、落札予想価格7000万~1億円のところ、1億700万円で落札された。他にもカボチャをモチーフにした作品は高額で落札され、版画作品は落札予想価格上限の1.5~1.9倍程度で落札されている。
今回はそのカボチャモチーフの版画作品のうち、LOT331《かぼちゃ(RY)》(27×32.5㎝、シルクスクリーン)をピックアップし、出品が見られた直近5年分の落札データをまとめたACF美術品パフォーマンス指標で読み解く。
2013~2016年では、落札予想価格80~120万円に対し、100万円前後で落札されていた。2019~2021年には、落札予想価格が150~200万円まで上昇し、落札価格も240~420万円に上昇した。2022年は落札予想価格300~450万円に上昇し、870万円前後で落札されている。版画作品ではあるが、10年間で9倍以上の伸び率を示している。草間彌生の作品は、国内のオークションだけでなく、海外のオークションにおいても堅調で、世界中のコレクターからも注目が集まる。芸術価値、資産価値がともに高い草間の評価は不動のものといえよう。
最近では、ハイブランド“ルイ・ヴィトン”と10年ぶりとなるコラボレーションコレクションを発表することが話題となっている。そのプレローンチイベントが始まり、東京都内各所では特別なインスタレーションを公開中である。草間の活躍は続く。
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※Shinwa Auctionの次回開催予定は1月28日
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