【日経QUICKニュース(NQN) 長谷部博史】日本経済新聞電子版が10日午後、政府は日銀の黒田東彦総裁(78)の後任に経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏(71)を起用する人事を固めたと報じた。植田氏は1998年から2005年にかけて、ゼロ金利政策に初めて踏み切った速水優総裁(当時)や福井俊彦総裁(同)の下で審議委員を務めた。植田氏の経済・金融政策に関する近年の主な発言をまとめた。
【22年7月6日=日経新聞・経済教室】
「インフレ率の一時的な2%超えで金利引き上げを急ぐことは、経済やインフレ率にマイナスの影響を及ぼし、中長期的に十分な幅の金利引き上げを実現するという目標の実現を阻害する」
「今後、コロナ禍からの経済活動再開に伴い、円安の需要刺激効果も強まることが期待される一方、世界的にはインフレ率の低下、経済の減速が予想される。日本における持続的な2%インフレ達成への道のりはまだ遠いとみておくべきだろう」
【22年5月23日=日経新聞・複眼】
「最近の名目ベースの円の対ドル相場が20年ぶりの安値圏で推移している背景には、日米金利差拡大という循環的要素に加えて、ウクライナ危機を受け資源を輸入に頼る日本の弱さが意識されたという構造的要因がある」
【21年4月1日=日経新聞のインタビュー】
「(21年4月の金融政策決定会合でまとめる)経済・物価情勢の展望(展望リポート)では23年度になっても消費者物価上昇率が目標の2%に達しないという予想を出しそうだ。次の総裁が就く23年度になっても異次元緩和の枠組みを基本的に維持せざるを得ないことを意味する。(21年3月に政策の点検を実施したのは)日銀は現行政策の長期化に備えて、その持続性を上げようとしたのだろう」
「持続性の向上のためにはETF(上場投資信託)の購入ペースを落とすなど、金融緩和の度合いを多少なりとも弱める必要が出てくる」
【18年8月20日=日経新聞・経済教室】
「長期化する異例の緩和の副作用も目立ってきている」
「債券市場の価格発見機能は大きく低下するとともに、利ざやの薄くなった銀行、運用対象が限定的となった機関投資家などによる金融仲介機能には無視できない負の影響が及んでいる」
「副作用に目配りしつつ、粘り強く現行の緩和策を続け、物価の上昇を待つことしかないだろう。その際、副作用抑制策と金融緩和の継続は矛盾する面があるので、そこへの配慮が必要だ」
【16年8月8日=日経新聞のインタビュー】
「物価2%目標の達成やそれに近づくとき、パンドラの箱をあけてしまう可能性がある。過去にも外資系金融機関が国債の売りを仕掛けて何度も失敗したが、投機的な売りが成功する局面が来るかもしれない」
「インフレ率が仮に1%をはっきり超えて1.5%も視野に入り、その先も上がり始める気配が出てくると、金利は大幅に上がり始める気がする。財政の問題が金利に跳ねる。インフレをコントロールできなくなり、財政にリスクプレミアムが生じる」
(財政規律の緩みについて)「日銀の金融緩和で低金利状態が長く続き、国債の金利が抑えられたので切迫感も生まれなかった。モラルハザードの状態で議論が前進しなかった」