※アディダスの株価
【NQNロンドン=菊池亜矢】独スポーツ用品大手アディダスの株価が戻りを試している。10日終値は149.62ユーロと、2022年末に比べ17%高と、同期間の独株価指数DAXの上昇率(11%)を上回る。米ラップ歌手との協業打ち切りが重荷となり、22年1月に付けた昨年来高値から4割安い水準にとどまるものの、1月に就任した新しい最高経営責任者(CEO)の前向きな姿勢が市場の期待をつなぎとめている。
アディダス株は新型コロナウイルスの感染が拡大していた中国の需要減退や高インフレによるコスト増が響き、昨年前半は軟調に推移していた。その流れに追い打ちをかけたのが、ラップ歌手で「イェ(Ye)」と名乗るカニエ・ウエスト氏だ。反ユダヤなど差別的な言動を繰り返す同氏に批判が集まるなか、アディダスは22年10月に同氏と協業していた「イージー」ブランドの終了に追い込まれた。
イージー終了の影響は8日に発表した22年12月期通期決算にもあらわれた。売上高が225億1100万ユーロと為替変動の影響を除いたベースで前の期比1%増えた。一方、継続事業からの純利益は83%減の2億5400万ユーロ。イージーの解消に関連した大幅な在庫調整の影響で増収率が小幅にとどまったうえ、ロシア事業の縮小や事業改善の一環としてのリストラなどコスト増が利益を圧迫した。
23年12月期通期は前期比で1桁台後半の減収を見込む。欧州と北米での景気後退リスクや中国の回復に不確実性があることを踏まえた。協業の停止で積み上がったイージーブランドの在庫を売却しない場合には、売上高に約12億ユーロ、営業利益に約5億ユーロのマイナス影響があると試算。営業利益が損益分岐点付近の水準になるとの見通しを示した。
市場では「22年10~12月期の売上高が在庫調整の影響で低調だったとはいえ、サプライズはほとんどなかった」(欧州の銀行)との指摘がある。実際、8日の決算発表翌日9日の株価は3%近く上昇して終えた。1月に同業のプーマの社長から転じたビョルン・ガルデンCEOが今月の決算発表後に、成長軌道への回復に向けて前向きな姿勢を打ち出したと受け止められたことも大きい。
ガルデン氏は「2023年は24~25年の成長に向けてのベースを作る転換期になる。在庫を減らし割引を抑える必要があるが、アディダスには成功のための要素がすべてそろっている」とコメントした。米証券テルシー・アドバイザリー・グループは「やるべきことはたくさんあるが、同社には再建を実行するための適切な人材、インフラ、資産がある」とみる。23年は売り上げと収益性が伸び悩む可能性があるものの、投資家はその先の業績回復に期待を寄せているようだ。