【日経QUICKニュース(NQN) 阿部美佳】衆参5つの補欠選挙(補選)の投開票が23日に迫る。結果は日銀の政策修正観測に微妙に影響するとの見方がある。自民党が勝利すると解散総選挙が意識される可能性が高く、日銀は選挙前には動きづらくなるとの思惑が広がりやすいためだ。
補選は衆院が山口2、4区、和歌山1区、千葉5区で、参院が大分選挙区だ。自民党が選挙前に議席を持っていたのは3つで、自民党にとっての勝敗ラインとしては3勝2敗との声がある。
結果が自民勝利となれば解散が意識されてきてもおかしくない。現在の内閣支持率は高く、例えば日本経済新聞による3月の世論調査では48%で不支持を上回る。補選での勝利は総選挙への追い風となる。
金融政策は経済・物価情勢の判断にもとづくのが当然ながら、選挙直前の政策変更は政治的な解釈が一人歩きしやすい。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)はじめ日銀による現在の政策は、現状維持か、修正なら金融引き締め方向の2択と位置づけられがちだ。
夏場の解散総選挙が現実味を帯びてくる場合「YCCの修正を含む政策修正を見送る判断につながりやすい」(SMBC日興証券の奥村任氏)との見方がある。三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊氏も「日銀の政策修正はどうしても引き締め方向の変更なので、日銀が当面は修正しないという可能性もある」と話す。
三井住友トラの稲留氏は一方、「世の中の日銀への関心がやや薄れており、政策修正に動いても世論への影響は大きくないかもしれない」ともみていた。日銀による「生活意識に関するアンケート調査」によると、現行の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」について「見聞きしたことがない」との回答は3月時点で50.4%と昨年12月の40.6%から上昇していた。
補選結果が自民党にとって厳しいものになった場合はどうか。支持率回復へ積極財政に乗り出すなどのイメージにつながるものの、SMBC日興の奥村氏は「国債増発圧力に伴って金利上昇圧力が強まる可能性は低い」とみる。解散以外に国政選挙は当面実施予定がなく、新型コロナウイルス禍も収束しつつあるなかで、過度に景気をふかす必要性は低いとみられるためだ。
日銀の植田和男新総裁は今月前半の就任会見で、これまでの大規模緩和の継続を強調しており、金融市場では早期の政策修正観測は後退しつつある。そこに「補選での自民勝利から解散総選挙」という新たなファクターが加わると、日銀の政策修正は一段と遠のくとの見方が強まりそうだ。