【日経QUICKニュース(NQN) 鈴木孝太朗】東京市場で唯一、議決権を持たない優先株を上場させている伊藤園(2593)。普通株の動きがさえない一方、優先株(25935)の方は24日も連日で年初来高値を更新するなど上昇が目立つ。24日のこの優先株の終値は1927円で、普通株の終値は4300円なので、価格差は2373円。今年に入り、およそ3年ぶりの小ささに縮まる場面もあった。
この優先株は普通株に25%上乗せした配当が得られる。普通株が無配になっても優先株の配当は下限を15円とするルールもあり、配当の面だけ見れば、投資家にとって魅力的だ。23年4月期(今期)の年間配当は普通株40円に対し、優先株は50円を計画する。ただ、この優先株は東証株価指数(TOPIX)の組み入れ銘柄ではなく、普通株に比べて流動性が低い。優先株なので議決権もなく、機関投資家の投資対象になりにくいと指摘されてきた。
米金利上昇などを背景に、足元ではバリュー(割安)株に投資家の関心が集まりがちだ。伊藤園の優先株の配当利回り(2.59%、24日終値時点)は普通株(0.93%、同)と比べて高く、バリュー株物色の流れに乗っている面もあるのだろう。アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネージャーは「割安感に注目して投資する投資信託も出てきているかもしれない」と話す。機関投資家の議決権行使に注目が集まる時代だけに、議決権よりも配当を重視して投信のポートフォリオに組み入れた場合、投信の購入者にどのように運用方針を説明するのか、興味深い。
伊藤園は4月期決算なので、4月26日の権利獲得の最終売買日までは配当狙いの物色が続く可能性が高そうだ。