【NQNロンドン=菊池亜矢】英高級ファッションブランドのバーバリーグループの株価が下落基調だ。24日には一時21.69ポンドと約5カ月ぶりの安値を付けた。25日終値は21.92ポンドと3日続落し、4月に付けた年初来高値を17%ほど下回る。米個人消費の先行きに不透明感が強いことに加え、最大手の高級ブランド企業と比べ売上高成長率が低いことが重荷となっている。
5月に発表した2023年3月期通期決算は、売上高が為替変動の影響を除いたベースで前の期比5%増の30億9400万ポンド、調整後営業利益が8%増の6億3400万ポンドだった。欧州や中東、中国本土を除くアジア太平洋地域の売り上げが伸びたほか、主力のアウターウェアと皮革製品の売り上げが好調だった。
中国本土の既存店売上高は通期で前年比11%減ったものの、第4四半期の1~3月期に限れば13%増と、新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込めようとする中国のゼロコロナ政策終了による客足の回復が顕著だった。南アジア太平洋地域はとりわけ好調で、1~3月期は中国人観光客が戻り始めたこともあり50%以上増えた。
決算内容を評価する声があったものの、投資家は米国の売上高減少を警戒する。QUICK・ファクトセットによると、同社の売上高に占める米国の比率は約2割と中国(2割強)に次いで高い。その米国の売上高が前年比3%減少した。22年3月期通期は、新型コロナの影響が小さかった20年3月期通期から28%増だったのと比べると「米国の弱さは懸念材料」(欧州大手銀)という。
売上高成長率が競合他社に比べ低いことも投資家には物足りなく映っている面がある。欧州市場で時価総額が首位のLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの22年12月期通期決算の売上高は、事業構造や為替変動の影響を除き、前の期比17%増だった。「バーバリーは高級ブランド市場における商品やサービスの位置付けを高めることに取り組んでいるが、差異化は簡単ではない。マクロ環境が不確実ななかで、その取り組みが進まない可能性がある」(米証券テルシー・アドバイザリー・グループ)と指摘する。