【日経QUICKニュース(NQN) 北原佑樹】トヨタ自動車(7203)が割安株からの脱却を図ろうとしている。13日の東京株式市場でトヨタのPBR(株価純資産倍率)が1倍を上回った。電気自動車(EV)をはじめとする次世代車に向けた投資の方向性が明らかになるにつれ、トヨタの市場評価が高まっている。
トヨタは一時、前日比114円(5.5%)高の2183円と、およそ10カ月ぶりの高値を付けた。終値は同104円50銭(5.1%)高の2173円50銭だった。PBRは1.03倍と2022年11月1日以来、約7カ月半ぶりに1倍台を回復した。
13日付の日本経済新聞などは「トヨタは27年にも次世代電池の本命とされる『全固体電池』を搭載した電気自動車(EV)を投入する」と報じた。実用化すれば、従来の電池の弱点だった航続距離が2倍超に伸びる。
UBS証券の高橋耕平アナリストは13日付のリポートで、25~30年にかけてのトヨタの方針について「技術やビジネスモデルなど、規模ではなく差別化を重視する戦略と、それを支える技術開発力の高さは中長期視点でポジティブ」と評価した。
株式市場ではこれまで、米テスラや中国の比亜迪(BYD)といった新興メーカーがEV市場で存在感を増す中、トヨタは投資やマーケティングで遅れているとの指摘があった。
4月に就任した佐藤恒治社長の下で、トヨタが目指す未来像が次第に明らかになってきた。5月の決算説明会で30年までのEV関連の投資額を5兆円と、従来計画より1兆円を上積みする方針を示した。6月1日には25年に稼働する米南部ノースカロライナ州の電池工場に21億ドル(約2900億円)を追加投資すると発表。同年にはEVの米国生産を始める。
トヨタは26年にEVの世界販売を年間150万台にする目安を掲げている。積極的な研究開発や設備投資を原動力に、22年に販売した約2万台から加速度的に伸ばす。
トヨタ株は足元の日本株高にやや出遅れていたが、ようやく追いついた。同社株は海外勢の買いの勢いが強まった4月以降、6月13日までに15%上昇し、同期間の東証株価指数(TOPIX)の上昇率(13%)を上回った。それでも22年1月の高値(2475円)にはまだ距離がある。