5月18日(木)マレットオークションで、”M-Live Auction”と近現代のアートオークションSale#230518が開催された。M-Live Auctionは、会場は設けず、オンライン同時入札を使って、オークショニアが競りを行う映像をリアルタイムで見ながら、パソコンやスマートフォンを通して参加するというスタイル。従来のセールとは異なり、下見会やカタログの掲載もなく、全てがオンラインのみで執り行われるオンライン完結型のオークションで、今回で2回目の開催となる。M-Live Auctionでは、落札予想価格平均19~28万円程度の作品が83点出品された。落札総額は1332万円、落札率は66.3%であった。一方、通常のセール#230518では、落札予想価格平均106~152万円程度の作品が、165点出品され、落札総額は、1億7394万円、落札率は73.3%となった。各セールの特性に合わせた価格帯と作品構成により行われた2つのセールの落札総額は1億8726万円、落札率は72.2%を記録している。
サクティ・ボーマン、予想の5倍で落札
最高額で落札されたのは、会場で行われたセール中盤に出品されたロッカクアヤコのLOT.082《Untitled》(100.0×100.0㎝、キャンバス・アクリル)で、落札予想価格2000~3000万円に対し、2200万円で落札された。大きな伸びは見せなかったものの、根強い人気で手堅い落札結果となった。
高い伸び率を見せたのは、インド出身の現代美術家サクティ・ボーマンのLOT.128《束の間の歓び》(73.0×60.0㎝、キャンバス・油彩)。落札予想価格150~200万円に対し、750万円で落札された。サクティ・ボーマンの作品は、2022年12月のセールでも8号サイズの油彩作品が落札予想価格下限の5倍程度となる競り上がりを見せ、関心が寄せられていたが、今回も熱気を帯びた競りが展開され、落札予想価格下限の5倍まで記録を伸ばした。海外市場で既に高い評価を得ている作家の希少な出品に注目が集まる結果となった。
評価が急上昇、「フラッグ」シリーズに期待
今回は、ミズテツオ(1944‐)に焦点を当てる。ミズは、イタリア、フランスなどヨーロッパ各地に滞在し、数多くの作品を制作している。中でも、船舶間の通信に用いられる国際船舶信号旗によるアルファベットを組み合わせた「フラッグ」シリーズが人気で、高く評価されている。アートフェアなどへの出展歴も多く、国内外で活躍の場を持つ作家である。
その「フラッグ」シリーズの1点、「J」「A」「M」のフラッグを組み合わせて描かれた作品、LOT.111《JAM》(99.7×65.0㎝、キャンバス・油彩)が会場で行われたセールに出品され、落札予想価格35~45万円のところ、54万円で落札された。近年出品された同一シリーズ、同サイズの動向をパフォーマンス指標から読み解く。2017年の出品では、落札予想価格平均15~21万円程度、落札予想価格下限14万円程度の落札であった。以降2019年まで落札予想価格平均はほぼ横ばいに推移するが、落札価格平均は、1.2~1.3倍程度ずつ僅かながら上昇しており、2017年に落札予想価格下限程度だったところ、2019年には落札予想価格上限程度で落札されるようになった。2020年には、落札予想価格平均21~31万円、落札価格平均48万円までといずれも上昇をみせた。評価が上昇した後、2021年と2022年は出品が見られなかった。久しぶりの出品となった今回のセールで更なる好結果を残した。2021年には画業50周年を迎え、2022年には個展が開催されたことも、好材料となったかもしれない。豊かな色彩で明確なメッセージが込められたモダンな抽象画「フラッグ」シリーズの継続した上景気を期待したい。
(月1回配信します)
※アート・コンサルティング・ファーム提供 ⇒リポート全文はこちら
※次回のマレットオークション開催予定は7月27日
QUICK Money Worldは金融市場の関係者が読んでいるニュースが充実。マーケット情報はもちろん、金融政策、経済情報を幅広く掲載しています。会員登録して、プロが見ているニュースをあなたも!詳しくはこちら ⇒ 無料で受けられる会員限定特典とは