SBIアートオークションによる現代アートのオークションが5月26日(金)27日(土)の2日間に渡り、代官山のヒルサイドフォーラムで開催された。セールでは、国内外で広く知られる作家、話題の若手作家、日本初紹介となる海外の新進気鋭作家など、国内の作家を中心に全320点の作品が競りにかけられた。落札総額は10億9960万7000円(落札手数料含む・以下同)、落札率91.6% と高記録を達成した。
白髪一雄が最高額で落札
1日目は、落札予想価格平均82~133万円程度の作品がセールにかけられた。単日の落札総額は2億1115万1500円、不落札は僅か8点で落札率は94.2%を記録している。セール冒頭では、奈良美智、村上隆、草間彌生のマルチプル作品が連続して出品された。既に評価が高い作家の順当な競りが続き、快調なスタートとなった。中でも、草間彌生は、13LOT(1LOT、他作家との出品含む)連続で出品があり、そのほとんどが落札予想価格上限を超えて落札される手堅い人気を見せた。
2日目は、落札予想価格平均304~490万円程度の作品が出品された。オリジナル作品を中心に182点の出品があった。単日の落札率は89.6%、落札総額は8億8845万5500円を記録している。
1点目に出品された中西怜の作品、LOT.142《Beach2》(101.0 × 151.0 × 10.5 cm、ジークレー、アクリル樹脂、アクリル、パネル、オリジナル額装)が、落札予想価格35~55万円のところ、276万円で落札された。落札予想価格下限の8倍近くとなる大幅な伸びをみせ、注目を集めた。
最高額で落札されたのは、独自の抽象絵画表現で国際的にも高く評価されている白髪一雄の作品。LOT198《無題》(73.0×91.5㎝、油彩・キャンバス)は、落札予想価格4000~7000万円のところ、1億1040万円で落札された。白髪は、他にも2点のオリジナル作品の出品があった。1点は落札予想価格上限を超えて落札され、もう1点は落札予想価格内の落札となり堅調を維持した。
山口歴のブラシストローク作品が好調
今回は、山口歴(やまぐち・めぐる、1984‐)に焦点を当てる。山口は、23歳で渡米して以降、ニューヨークを活動拠点として活躍している現代アーティスト。鋭い色彩感覚と勢いのあるブラシストローク(筆致)を“カットアンドペースト”と呼ばれる独自の技法を用い制作された作品で高い支持を得ている。その秀でた独創性で有名ファッションブランドからのオファーによるコレボレーションも多く手掛けており、認知度も高い。
本セールでは、2日目にオリジナル作品が1点出品された。LOT.175《RD No.18》(94.0×146.0×2.5㎝、UVトップコート・アクリル・エポキシ樹脂・合板)は、落札予想価格300~500万円のところ、予想価格の上限に近い437万円で落札された。
同じRDシリーズ、同サイズ(長辺100~150㎝)の過去の落札データを抽出したACF美術品指標から動向を読む。2019年の出品では落札予想価格平均70~100万円のところ、111万円で落札されている。2020年には、落札予想価格平均、落札価格平均ともに1.5~1.8倍程度まで上昇している。右肩上がりのグラフは続き、2021年には371万円程度まで落札価格平均を上げている。2023年、落札予想価格平均の上昇に対し、落札価格平均は予想価格内で収まり、横ばい推移となった。直近7月のセールでも、該当作品が落札予想価格内で落札されている。伸びは鈍ってきたものの、急速な下落は見られず安定している。市場景気が変動を見せる中、今後どのような動向を見せるか注視していきたい。
(月1回配信します)
※アート・コンサルティング・ファーム提供 ⇒リポート全文はこちら
※次回のSBIアートオークション開催予定は9月15日、16日
QUICK Money Worldは金融市場の関係者が読んでいるニュースが充実。マーケット情報はもちろん、金融政策、経済情報を幅広く掲載しています。会員登録して、プロが見ているニュースをあなたも!詳しくはこちら ⇒ 無料で受けられる会員限定特典とは